28.あなたの隣の私はいつだって ページ29
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にゃーご、にゃーご。
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ぺろぺろ、とお昼寝してたはずのにゃんこすけが私の頬を舐めてくれる。
それはきっとしょっぱくて、生温かいもののはずなのにまるで「大丈夫だよ」と言ってくれているようで
また嗚咽を抑えるので精一杯だった。
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好きだった。あのとき、確かに私は好きだった。あれは恋だった。
あれは確かに、初恋だった。
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胸が痛くて、苦しくて、やめたい、消えてくれと頼んでも消えてくれなかった、あの熱情。
どことなく私の片隅でひっそりと息をしていた、消化しきれていなかった夏のカケラ。
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ーーー…翔『最後まで、君を思ってた』
『…』
翔『この手紙は、智くんが何年も前に書いたものだよ』
『…』
翔『だけど俺なんかが出していいのか、って悩んで何年もカバンに入れといたままだったらしい』
『……』
翔『宛名は君。これは智くんの遺品だけど、君に渡す。ちゃんと』
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彼の想いを、忘れないでやって。
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「……しんじゃったらけっこんしき、これないじゃん」
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あれから私も沢山の恋をしてきました。でもどことなく違くて
あなたを忘れることはできないから
一度好きになってしまえば、もうその人は自分の一部になってしまって忘れることはできないから
あなたを受け入れてくれる人と、私は一緒になります。
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あなたと過ごした夏は一生ものだった。何も知らない私に新しいことを沢山教えてくれた。
あの夏がなかったら、きっと今の私はいない。
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必死に涙をぬぐって、ヴーヴー鳴るスマホを手にとって潤からの「どこにいる？」というラインに返して
…ふと思って、設定から友だちを選んで非表示リストを眺める。
ーーーー…そこには。
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「……かえてない……」
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大野さんのラインは、変わらずそこにあって
ずっとこのアカウントを使っているようで
そのアイコンの写真は変わらずあの時のまま。
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古ぼけた、びっくりした顔をした高校生の私と満面の笑顔の大野さんのあのツーショット。
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「……ぅーーー…」
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数年ぶりに見た、あなたの顔は
変わらず私の横で笑っていた。
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