ナイトとツンデレ (ページ48)

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ナイトとツンデレ47 ページ48

控え室へと向かった真緒は勢いよく扉を開けた。
(人1)は多少驚きながらも無言のままだ。
着替え終えた(人1)はパタンとロッカーを閉めもう用はないとばかりに帰ろうとする。
真緒はこのチャンスを逃せば次はないだろうと思い(人1)との距離を詰める。

『(人1)…なんで教えてくれなかったんだよ』

(人1)の後ろにはロッカー、前には真緒。
逃げ場もなく真緒の方が背が高いのにまた(人1)に見下ろされている気持ちになる。
それは(人1)が長年この世界でつけたものか、あるいは...。
そんな事を考えていると静かに蒼い瞳が真緒を見つめる。

『教える……？あなたに言って何になるの？
あなたに言えば…どうにかなるの？』

感情もなにも含んでいない冷たい声。

『幼なじみだから力になりたいって思うだろ!?』

『だったら！！』

突然響く悲痛な叫び声。
華奢な体から発せられた声は空気を振動させるような声だった。

『だったら！幼なじみじゃなかったら!?
年下のくせに偉そうにしないで！！』

熱いものが頬を濡らす。
まるで子供のように大粒の涙を流しながらそれでも(人1)は続ける。

『真緒は...私たちにとっては弟みたいな存在なの……。
嫌な思いもしてほしくないし守りたいの...』

ツキン、と胸が傷んだ。

(弟...俺だって……)

『...凜月はこの事知ってんのか？』

そう問うとふるふると頭を振る。

『私の問題なの...もう関わらないで...今も、これからも、これは私の問題なんだから。帰って』

しかし真緒はその場を動こうとしない。
翡翠色の瞳が(人1)を捉えている。

『帰れって言ってるでしょ！
お節介もほどほどにしなさいよ！
あなたなんかにっ……！』

突然肩をつかまれた(人1)はその口を塞がれた。
唇に温かくて柔らかい感触。
しかし(人1)が理解するより早くその唇はそっと離れた。
頭の中が真っ白になり言葉もうまく出てこない。

『ま……あな...た...』

しかし真緒は困惑している(人1)をまたロッカーに背を預けさせるように深く口づけをする。

『……っ...！』

息を整えていない(人1)は苦しそうに真緒の胸板を押すと名残惜しそうに唇が離れた。
(人1)の目からは涙がこぼれているがそれがどんな涙かわからない。

『俺はお前が好きだ。
凜月より絶対に幸せにするし守りたい。
弟じゃなくて男として見てくれよ』

どくん、どくんと心臓が痛い。
この場から逃げたい。

(...やだ！)

そう思うと(人1)は控え室をあとにして走り出していた。