ナイトとツンデレ (ページ26)

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ナイトとツンデレ25 ページ26

(人1)side

やがて雨はザァーという音になるほど土砂降りになって来たが、(人1)は傘もないまま静かに暗い道を歩き始めた。

(姉さんが…怒ってた。
私がこのままいなくなれば…姉さんはまた芸能界に戻れるかしら…)

どこに向かっているのかはわからない。
冷たい雨が熱を帯びた頬に当たってちょうどいい。
服も髪も雨でぐしょぐしょのはずなのに、なぜかそれが心地良い。

(いなくなるって…どこに？)

そう考えているうちに開けた場所に出て、そこは前にも来たあの公園だった。
こんな暗い時間に、しかも雨が降っているので人は誰もいない。
(人1)は誰もいないブランコに座りゆっくりと息を吐く。

(このままここにいれば、いいかしら。
どうせ私はいらない子なんだから)

どれほどそうしていただろうか。
辺りも相当暗くなってきて、さすがに1人では危ない暗さだった。
けれども(人1)は動こうとはしない。

(……雨、止まないわね)

顔を俯け目を閉じていると、不意になぜか雨が当たらなくなる。
目を開け、顔を上げてみるとそこには＿＿。

『もう真っ暗だぞ？なにしてるんだ～？』

困った顔で笑う真緒の姿があった。
手には傘が握られており、自分が濡れるのはお構いなしに(人1)の方へと向けられている。

『…あなたが濡れるわよ。』

俺はいいのと言いながら着ていたパーカーも(人1)を覆うようにかぶせる。
とたん懐かしいような匂いがして泣きそうになる。
だが、年下の前で泣くわけにはいかない。
そう思い我慢をしていると真緒が口を開く。

『雨降っててお前が泣いてるみたいだよ。
いいだろ泣けば。昔は泣き虫だったんだし。』

そう言い(人1)を抱きしめてあやす様に背中をぽんぽんっと優しく叩くと、不意に堰が切れたように泣き出す(人1)。

『…窓の外を見てたらさ、こんな雨の中誰かが走ってんな～って見てたらまさかのお前でさ。
急いで追いかけようとしたけどもう見えなくなってたから、来るならここかなって思ったらほんとにいた。』

『だって…他に行くところなんて知らないし…』

『お前はさ、外見は変わったかもしれないけど中身は俺の知ってる(人1)だな〜やっぱり。
泣き虫でバカで…でも優しいヤツだよ、本当に』

(人1)が泣き腫らした目で真緒を見ながら

『それってバカにしてる？』

と尋ねると少し困った笑いで

『してないよ。変わってなくてよかった。』

と微笑む。
姿や口調が変わっても、やはり中身は(人1)だ。
真緒の知っている、弱虫で臆病な(人1)だった。