ナイトとツンデレ (ページ25)

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ナイトとツンデレ24 ページ25

(まったく…なに慌てているのよ、私は。
あんなのいつもの事じゃない。それなのに私ってはあんなに取り乱しちゃって…)

そう思いながら長くもない距離を歩いて家へ着き、ただいまとドアを開ける。
するといつも通り星羅が笑顔で迎える。
(人1)は少し恥ずかしそうに持っていた小さめの箱を星羅へと差し出す。

『あ、あのね…姉さん。
これ作ったの。よかったら食べてみ…』

勇気を出して開いた口から出る言葉が最後まで発せられることはなかった。
作ったと聞いた星羅は(人1)が差し出していた箱をすぐに受け取りそのまま横の棚の上に置き、(人1)の手をとる。

『作った!?ケガしてない!?
…(人1)？あなたはアイドルなのよ？
ケガでもして写真とかに影響が出たらどうするの…？』

星羅にとっては妹の身を案じた言葉だったのだろう。
元々は交代でやっていた食事係もアイドルだからケガをしたらだめ、という理由で今は家事のすべてを星羅がしているほどだ。
だが(人1)から見ればそれは逆で…。

『……してよ』

声にならない叫びが静かに響く。
そして俯いていた顔をキッと上げて妹は姉を睨む。

『どうして姉さんは！』

『…(人1)……？』

『私は…私は姉さんが笑顔になって、昔みたいに笑えるようになればって作ったのに…。
ただ、ありがとうって笑ってほしかったのに…』

声に出た感情は収まる事を知らない。
理不尽に怒っているとわかっている。
けれども、もうこの感情は抑えることはできない。

『姉さんは「妹」の私よりも「アイドル」の私の方が大事なんでしょ！？
そうよね、妹の私がいなかったら姉さんは夢を諦める事なんてなかった！
私なんていなかったら…産まれなかったら…！』

パシィン…という音とともに静寂が訪れた。
乾いた音、熱を帯びる頬、痛いと感じるのに少し時間がかかった。
産まれて、初めて星羅が(人1)を叩いた。
星羅は両目に涙を溜めて静かに(人1)を見る。

『あなたなんて知りません。
反省するまで、家に帰ってこないで！』

そういい(人1)を外に出して鍵を閉める。
顔を俯かせる(人1)の頭にポツン、ポツンと雨が降り始める。
まるで今の自分を嘲笑うかのように雨は次第に降り出してきた。