218.雨の中君を想ふ…side N ページ28
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和也「出ねぇ……」
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プルルルル、と乾いた電子音が鼓膜を揺らす。何回もかけて、あの嬉しそうな声が出ないことにイラついて
3回かけて、諦めた。
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年末。俺は家に残るって言ったのに無理やり連れてこられた親戚の家。
そこまで遠くないし、隣接した県だから電車で帰ろうと思えば帰れる。
もしアイツになんかあったらーーー…、その時はぶっ飛んで帰ってやろうって思ってた。
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雅紀からラインが来たのは30分前。
【こっち停電になっちゃった！ニノは？だいじょーぶ？】
停電どころか、雨すら降ってない。そりゃカラッとした晴天かと言われたら曇天だけど停電になるほどの悪天候じゃない。
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文字を打つのが怠くて、無料スタンプで【大丈夫】ということを伝えたら
【Aちゃんは大丈夫かな？】って来た。
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あぁ、アイツって雷とか嫌いだっけ？
ふと考える。……そーいや聞いたことない。もし停電になってたら子犬みたいにブルブル震えてそう。
親とかいるんだっけ、と思い出せば県外に行くとか言ってたよーな。そしたら1人？
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1人で停電、って絶対怖がってる。
つーか、あの顔で雷得意とか言われても信じらんない。ぜってー泣いてる。
あれだ、布団にくるまってイヤホン大音量にして震えてるヤツだ。
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和也「……ガキか(笑)」
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思わず頭んなかで想像してみたら、不思議と笑みが溢れてきた。
面白い構図だけど、本気でビビってたら可哀想。取り敢えずライン送ってみよって毎年泊まる時に貸してもらってる1人部屋でラインを開く。
大丈夫かよ、って送れば【だいじゃうぶ】って送られてきた。誤字あるし、ぜってー大丈夫じゃない。
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和也「……」
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迷惑、とかじゃなかろうか。通話ボタンを押すのを少し躊躇う。
もし全然大丈夫で、「ナリくん心配性ー！」とか言われたら俺死にたい。
でももし、1人でぶるぶる震えて泣いてたら。……泣いてたら。
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和也「……」
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ポチ、と通話ボタンを押して耳にスマホを当てる。プルル…と何回か乾いた電子音が鳴り響いて
でも誰も出る気配はない。なんかあった？って何回かコールしても出ることはなく。
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諦めかけた、そのときだった。
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