ACT23 ページ25
『弱いところって見せちゃダメじゃないの』
いつもと違う弱々しい彼女は、散々怒られたあとのような子供ようであった。彼女の心のネックがここだとエーミールは確信した。
事情は分からないが、深い深い傷口。適切な処置をしないと化膿を起こし悪化する。
やっと見せたその【弱み】に傷つかないような答えを紡いでいき、返す。
em｢【敵】には見せてはいけませんね、それは正しい。しかし【仲間】となるとそうではなくなります。……貴方にとって私達はたまだ【敵】ですか？｣
敵だろうか、とAは思考を巡らせる。
美味しいものを食わせてくれた。
食堂まで案内してくれた。
服を買ってくれた。
飯を腹いっぱい食わせてくれた。
凄惨な光景を見せまいとしてくれた。
仲間に入れてくれた。
気がつくと視界がふるふると歪み、咄嗟に瞬きをすれば温かなものが彼女の頬を伝った。腹部の変な所が痙攣して不規則に彼女の意志とは関係なしに空気を取り込んだ。
なにか弁解しようとしてもいつもの声を出すには、色々なところが不安定であった。
刹那、みしりと音がしたかと思うと騒々しい音を出して土砂崩れのように入口の戸から人が溢れてきた。
tn｢何しとんねんお前ー！！｣
ut｢いいから上どけおまぇら！！！｣
rb｢ロボロちっちゃくって潰れとるからはよ退け！｣
os｢め″う″……｣
kn｢オォスマアアアアアアン！！！！！｣
その騒々しさにやれやれと笑みを浮かべるとエーミールは天井の方に声をかけた。
em｢最初っからそうすればええのに、ゾムさんいるんでしょう？｣
すると天井が一部外れ、ゾムが勢いよくそこから飛び出し、その勢いのままAに無造作に抱きついた。
zm｢女の子やし！！てかエミさんなに女の子泣かしとんねん！！｣
em｢えええ今のはちゃうやんん｣
と、扉の方のギャラリーからもそうだそうだ、何泣かせとんねんと、やじが飛び交う。
その騒々しさにAは、どこか温かいものを感じたのであった。
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作者名：にゃんとららんらん | 作成日時：2019年6月14日 13時
