ACT19 ページ21
｢A、Aかい？｣
『……希望は？』
なんのこっちゃと首を捻ると、老年の女性はなんの迷いもなく答えた。
｢ナイフとパン｣
その答えを聞いてAは確信めいた表情をしたかと思うと女性にとびついた。彼女のものとは思えぬ声で嗚咽の声が漏れている。女性は赤子をあやすように女性の背中をさする。
ふと女性がこちらを見ると｢わざわざありがとうございます。｣と声を掛けた。
zm｢いや、Aが要求した事なんで……別に俺はなんも｣
｢謙遜なさらないで、この子が人と協力するなんて初めてですから。｣
『母さん、やめて…』
Aがそう口を挟むとあらまぁと零して薄く笑った。
彼はこの部屋に入った時からある違和感を感じていた。
微かに電子音らしき音が鳴り続けているのだ。そして部屋を見渡す限りそれらしき機械はない。
ひとしきり感情を出し終えたのか女性から離れ、いつも通りの彼女が立ち上がり、インカムに手をかけた。
『こちら暗殺部隊。母を保護した。早急に脱出する。』
インカムの向こうから誰かはわかり兼ねるが｢了解｣と声が返ってくる。
『ぼーっとすんな、出るぞ。……母さんは大丈夫？』
｢大丈夫よ、歩けるわ｣
zm｢あぁ、んじゃあ襲われたら片っ端から殺すか｣
『そうした方がいいだろう。母さんは後ろにいてね。』
女性ははいよと軽く返した。娘がこんなにもハッキリ人を殺すと言っているのに何も言わない辺りとても気丈な人だとぼんやり考える。
扉の外へと出る。
例の電子音の間隔が短くなる。そして微かに鳴っていたのが大きくなり、彼は音の出処を理解した。
女性からであった。
彼がAと叫びながら彼女を庇う、それと同時に女性からの電子音はまるで心停止のような音を出した。
爆発音。
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作者名：にゃんとららんらん | 作成日時：2019年6月14日 13時
