ACT17 ページ19
Aとの初めての仕事、というか戦争。
いつも1人でしていた潜入も二人いると安心して遂行できる。もちろん二人いることでの発見率とか云々は心配ではあるが。
とまぁそんな仕事の心配よりも、グルッペンから受けた命令の方に気を取られがちで、それどころではなかった。
gr｢ゾム、任務の前に1つ頼み……言ってしまえば命令がある。｣
zm｢俺だけ？｣
gr｢あぁ、お前にしかできないからな。｣
そうして総統は小さなポケットナイフを彼に差し出した。
gr｢特注だ。刀身に毒を塗りながら打ったものらしい。1人2人試したところ、掠っただけで致命傷となった。｣
zm｢……これをどうしろって？｣
gr｢もしもAが怪しい行動をとった場合、それをちょいと引っかりゃいい。母親の安全をとった途端に暴れる可能性があるからな。｣
zm｢まさか、そんなことするはず｣
gr｢無いとは、言いきれない。だろう？｣
腹の底に響くそんな声で言われてしまえば、何も返せなくなる。
gr｢……信用していないわけではない。この戦争で彼女の信用が計られる。ただそれだけだ。裏切りは粛清しろ。｣
たった一日。たった一日だけだが、彼女と過ごしてそんな事をする人ではないと感じていた彼だったが、更なる反論の言葉を飲み込んで｢
『おい何ぼーっとしてんだ、殺されてぇか』
意識が現在へと戻る。隣の彼女は乱暴に彼を過去の世界から引き戻した。
zm｢悪り……俺も真っ黒良いなぁ｣
『緑もいいと思うぜ、自然に紛れられるってのは強みだな』
彼女の格好は昨日猫耳パーカーを来てたとは思えない凛々しい姿に戻っていた。闇に紛れるにはうってつけの黒装束。そこに一点だけ爛々と光る桜色の瞳。
そうやってまた現実から離れていると会話がループする。
なんでもないと返す彼の手はポケットの中。
総統から頂いたポケットナイフを手汗混じりに握り締めていた。
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作者名：にゃんとららんらん | 作成日時：2019年6月14日 13時
