ACT13 ページ14
目が覚める。見慣れない天井。寝なれないふかふかのベット。初めての腹の急降下。
トイレはどこだ。不味いぞ、ここで脱糞とか流石に女としてどうだ。
腹に影響のないように飛び起きる。ここは……。
『……そうだ。我々国か。』
そう思い出し、若干体の緊張が解れる。ここまで安心した目覚めは初めてだ。
とりあえず自室のドアを片っ端から開けていき、トイレを見つけるとすぐさま滑り込み昨日の分を全て出した。やり切った(達成感)
そう、昨日から初めてな事でいっぱいなのだ。
普通の女子の服を買って着たり。
髪を上げて、視界が明るくなったり。
すいーつを食べてはしゃいだり。
腹いっぱいにものを食べたり。
頭を、優しく、かつ乱雑に、くしゃくしゃに撫でられるのも。
それに安心を感じてしまうのも。
……。
まるで普通の女の子じゃないか、ついつい自分のことを【俺】じゃなくて、【私】と言いそうになる。低い声でなくて、数トーン上げたアルトボイスくらいになりそうになる。
この国で幹部としてだが、【安心して】暮らせていける。……のか。
【ここでの安住】
……。
いや、俺は、一生安心なんてできやしない。
常に不安に突き動かされて、もがき続けるだけだ。
【苦しいなら、苦しいって言えばええやん】
『……お喋りが過ぎたな。』
人に弱みを握られるのは不安の種だ。経験則と言うやつだ。昨日のアレは良くなかった。酒は人前で飲むもんじゃない。
普段だったら消すところだが。
心のどこかで、殺さないでくれと言うような、そんなストッパーがかかっていることに、気がついてしまった。
真逆な、あんな奴が【安心】するやつなんてな。
あいつも暗殺者。【安心】を感じるべきでないし、感じないはずの人間だ。
なのに。
『……昨日の気持ち悪いの、残ってるな』
その思考に反発する異物が、【私】の中にいるのをそれとなく感じた。
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作者名：にゃんとららんらん | 作成日時：2019年6月14日 13時
