第10話 ノワール ページ11
「のわーる! まだ、食べていい?」
「どうぞ、存分にご堪能ください」
「やったー!」
そう言って口いっぱいにケーキを詰め込む彼女。帽子で隠れていてあまり表情は見えないけど、きっと幸せそうな顔をしているはずだ。
ここはケーキ専門店。1時間食べ放題という形式のお店だ。周りのお客は女性ばかりで異性の私が入るのは少々気が引けた。
が、仕方ない。お嬢様の為だ。星人である彼女を保護する目的もある。
私はというと肝心のケーキは頼まず、ダージリンティーを片手に今月の予定をスケジュール帳に書き込んでいた。
書き終わって見直す。今月は……珍しい。あまり予定がないようだ。お嬢様を色んな場所へ連れて行くことができるかもしれない。
ふとお嬢様の方に目を向けるとトレーを持ちながら陳列棚の方に歩き、ケーキを取ろうと試みていた。トングを持つては非常に不安定で見ていて危ない。
スケジュール帳をポケットに仕舞い、エトワルの元へ駆け寄った。
「私がお好きなケーキをお取りしましょう」
「じゃあねー、これとあれと、それ!」
「畏まりました」
トレーに素早く3つ乗せる。
「あとー、それとこれ!
あ、それもう1個!」
「畏まりました」
「んーとね、あとはー……。
この、ぴんく色の、けーき!」
「畏まりました」
「あとはー……」
言葉を続ける彼女を制止する。
「お嬢様、これ以上は他のお客様のご迷惑となりますので、食べ終わってからまた乗せましょう」
「はーい」
元気に手を挙げて返事し、ふよふよと席に戻る少女。星人特有の習慣が出てしまっている。地上では足でちゃんと歩いて移動するようにと指示したはずだが……後で練習するか。
彩り豊かなケーキが乗ったトレーをテーブルに置き、彼女が頬張る姿を横目で眺める。
「おいしいよ、のわーる!」
「ふふふ、それは良かったです」
ほっぺたについているクリームに気付かず微笑みかけた彼女が可愛らしくて、愛しくて、私の頬もつい緩んだ。
閉じ込めなくて、良かったのかも。
ケーキと同じくらいカラフルな彼女の瞳。前までは黒と、青色、そして青緑色しか見せなかったのに、今ではさまざまな色彩で私を楽しませてくれる。
──のわーるはなんで
わたしといっしょにいるの?
──お嬢様を楽しませることが
私の仕事であり、幸せですから。
いつだったか。
そんな返事をして微笑んだ思い出が
脳裏に過った。
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新玲乃音元iqqvyuu(プロフ) - 終わりました (2019年9月5日 19時) (レス) id: c000802a3c (このIDを非表示/違反報告)
新玲乃音元iqqvyuu(プロフ) - 誰もしないので編集します (2019年9月5日 19時) (レス) id: c000802a3c (このIDを非表示/違反報告)
新玲乃音元iqqvyuu(プロフ) - 終わりました (2019年5月14日 19時) (レス) id: d271bd57c6 (このIDを非表示/違反報告)
新玲乃音元iqqvyuu(プロフ) - 最新します (2019年5月14日 16時) (レス) id: d271bd57c6 (このIDを非表示/違反報告)
新玲乃音元iqqvyuu(プロフ) - 訂正終わりました (2019年4月9日 22時) (レス) id: d271bd57c6 (このIDを非表示/違反報告)
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