【小説】箱舟の軌跡 (ページ12)

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第11話　ツィアルドゥールページ12

「白い雲と白い砂浜。青い空と青い海！」

　そして私の心もブルー！

「ねえビィ。私はどうしてこの歳になっても結婚できないのかしらね？」

　海岸で戯れるイケメンを、パラソルの下からトロピカルジュースを飲みながら眺めつつ、隣のフォビアに思いを伝えた。勿論、イケメンには聞こえない程度の音量で。

「知らないワヨ、この嫁ぎ遅れガ。アタシは一生結婚できないシ、しかも子供も望めないから今が末代なのヨ。むしろアタシが愚痴を言いたいワ」

　案の定、こいつは面倒臭そうに返した。心底、面倒臭そうに。片方の眉を歪めて、優雅にトロピカルジュースを飲む。裾の長い、白いスカートが、風にふわりとたなびいた。

「一応、分かってて言ってますのよ」

「サイッテーネ」

　清楚な容姿に似つかわしくもない舌打ちを一つ。眉間に寄るしわ、軽蔑したような冷たい目線。苛立つこいつの顔とか、空団じゃ私くらいしか見た事ないんじゃないのかしら。

　そのくらい仲が悪いからなのか、そのくらい打ち解け合っているからなのか。私がフォビアにした事を考えると前者だけども、できる事なら後者であってほしい。ぼんやり考えて、言う。

「それにしても、ビィ、こう思わなくって？」

「何？」

「イケメン最高って」

「ソレヨネ」

　溜め息をついて、再びイケメン観賞に戻る。

　今のところ、私達を一番繋ぎ止めていられるのは、趣味だ。あらゆる種族のイケメンの観賞、観察。ふとした時に見せる表情や、仕草。

　ようは、芸術品を眺めるみたいなものよ。あるいは、運動選手のパフォーマンスを評価するようなもの？それを見ている事が、私もフォビアも好きだった。

「私は獣人のイケメンが好きですわ。野性的ですわよねぇ」

「ダークエルフのイケメン好きダワァ」

　最高。私は微笑みながら、フォビアを見た。そしたらこいつ、舌舐めずりをしていた。野獣の眼光だわ。こいつがこんな目をしていたら、たいてい、何かやらかすのよね。

　こいつの欲求は、ルークに受け止めてもらいましょう。彼は、またこいつに追いかけ回されるでしょうね。可哀想だけど、他の多数のイケメンが被害に遭わないためよ。何かを成し遂げるための犠牲はつきものなんだから。

　さてと、こんな事考えてないで、イケメン鑑賞、再開しますか！