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赤井side






彼女を見つけたのは本当に偶然だった。


道端に放り出されたペットボトルを見つけたのだ。


近くに水痕もあったことから誰かが落としたのだろうと思い、ふと脇の路地に目を向けた。







そこにただひたすら暴力に耐えている少女がいた。







いつも喫茶店で俺の話を楽しそうに聞いてくれる少女。


呼べば犬のようについてくる少女。








一瞬のことであった。








かっと頭に登った熱が、これが怒りと理解するのに随分と時間がかかったが、


理性を壊し、


Aを殴る男の首に手刀を落としていた。


こんなにも呆気なく理性が消え去るのは初めての事だった。


熱が引いていくのを感じながら、肩で荒く息を整える。







するとゆっくりと少女が瞳を開けた。




深い海のような魅惑を持った瞳だ。




……幾つもの物が沈み、日に当たらぬ深海の色。








赤「……大丈夫か」


『……』








俺の問いかけに少女は小さく頷いた。


どうやら意識はしっかりとしているようだ。


ほっとため息が漏れる。


彼女の口元の血を拭ってやり、体を起こすのを手伝った。








赤「とりあえず病院に行こう。警察にも連絡を……」








携帯に手を伸ばしかけたその時、パシッと腕を小さな手が掴む。


痣だらけになったその手は鋭い爪をきりきりと立てていた。


乱れた髪で隠れ、表情は伺えない。


しかし力強く首を横に振る仕草は、明確な意思表示だった。









赤「病院も警察も、嫌なのか……?」


『……』








彼女は何も答えなかった。


答えずともわかる。


そして俺はこの後の選択を後に後悔することになった。


何を血迷っていたのだろうか。





もしここで彼女を突き放していれば、





あんなにも深く関わることはなかっただろうに。












赤「……怪我の手当をしよう。背中に乗れ、俺の家なら治療するための道具がある」










15歳の少女を家に連れ込む日が来るとは夢にも思っていなかった。


そもそも単独でアメリカに渡った俺が誰かをこんなに心配するのも不思議なものだ。


慣れない生活、ギリギリな毎日、多忙なスケジュール。


自分の事だけでていいっぱいなのに。








目の前の少女がどうしても放っておけない。

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greenthemumkiku(プロフ) - すごく...すきです、、更新、待ってます、、!!!!はよ赤井さん出てくれぁえええ、!! (2022年3月27日 23時) (レス) @page29 id: c57106f8c4 (このIDを非表示/違反報告)
白ウサギ(プロフ) - 稲荷さん» ありがとうございます!まだまだ書き始めたばかりですが、できる限り更新できるよう頑張ります! (2022年2月17日 21時) (レス) id: b629e84f8a (このIDを非表示/違反報告)
稲荷(プロフ) - 続き楽しみです! (2022年2月17日 21時) (レス) @page10 id: d01056f976 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:白ウサギ | 作成日時:2022年2月15日 20時

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