〔ｵﾘｼﾞﾅﾙ〕王女と異国の朱い月《 Ⅰ 》 (ページ2)

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Ⅱ. ページ2

このドゥアンツ王国も、現国王から次期国王に交代する

戴冠式が控えている。

人々の間では、次期国王は、第一王女。

そう。私の姉だと噂されている。

まぁ、今までもこの国は、法律では定められてはいないが、

長男長女が国王に就いてきたわけだから

人々がそう噂するのも訳無いし、驚いたりもしない。

法学、語学。医学に歴史学。心理学や薬学。そして、剣に、護身術...。

私は、19年間、弱音など1つも吐かずに頭を使い、体を動かしてきた。

一方、姉様は、マイペースで穏やか、争いごとを嫌うお人。

城下町に遊びに行ったり、城で読書をしたり、のんびり毎日を送ってきたであろう。

別に、正反対の姉様に文句を言いたいわけではない。

むしろ、姉様は私の憧れでもあり尊敬するお人。

次期国王にも相応しいと思っている。

2人目に産まれる子は、男の子だ。

そう父様に、国民に、望まれて、産まれてきたのは、女の私だった。

だから、同い年の女の子達と人形遊びをせずに、年上の兵士達に混ざり、剣の練習をしてきた。

その努力を、苦労を、鼻にかけようとは思っていない。

次期国王の座も狙っているのではない。

私が男じゃないから。女だからと周囲にバカにされたくないから。

男しか剣は握れないと、女は守られるしかないという常識を

ぶち壊したいから。

『今日の朝稽古は、これで終わりとします。』

『各自、休憩をとること。解散』

私の号令とともに、兵士達の揃った返事が響いた。

各々、稽古場を後にする兵士達を見送り

自主練の為の準備運動を始めようとしたとき

｢今日も元気だねー、モーナ｣

聞き慣れた心地よい低い声が、私の耳をくすぐった。

『ｯトト?!』