救いの手 ページ7
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何度目の救いの手だろうか。
1人でころころ表情を変え、仕舞いには不敵に笑う私に「やっぱ病院行くか?頭の」なんて失礼な言葉を浴びせる。
「大切なものなんです。お返し頂けますか?」
そうと考えれば怖いものは無い。銀時と私は落し物を拾った者とその持ち主。ただそれだけのこと。
自身の両手を合わせ、その死んだ目にきらきらとした視線を送れば、気だるそうな声で了承の返事が返る。
「取りに帰らねーと...あんたここら辺の人?」
「はい、そこの寺子屋で手習いを...ッ」
わざわざ届けてくれるのか。案外優しいところもあるなんて気を取られていたものだから、余計に個人情報を詳しく話してしまう。
口を噤んだ時にはもう遅く。
「はいはい、あのちっちゃい建物ね」
「んじゃ後で届けに行くわ」
背を向け、ひらひらと手を振りながら遠ざかっ...て、小さいは余計だっての!
...何はともあれ再び会う約束をしてしまった。
「先生!お花の冠の続きはー?」
「次は俺たちと遊ぶ番だ!先生鬼ごっこしよ!」
でも今は、不思議と焦りを感じない。
銀時が私を覚えていなかったから?大切な教科書が戻ってくるから?
不思議な気持ちにうんと悩むけど、公園から響く生徒の声に振り返った。
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「....ほんと...子供って残酷よね...」
生徒が帰った教室に一人。
夕日が反射する長机に項垂れる。
あれから業者のような数の冠作らされ、まさに鬼の如く走らされた鬼ごっこ。作って走って作って走って...無邪気な心に殺されかけたのは初めてだ。
どうも私には運動の才がないらしい。
大好きな松陽先生の剣術授業だから、当時は自分なりに頑張けど....結論は言うまでもない。
「...でもやっぱり男の子には剣術も身につけて欲しいしなぁ..」
私の体力が続かないからと校外活動を無くすわけにはいかない。やはりもう一人運動面を補ってくれる人員を増やすしかないのだろうか。
「...こんな時、先生ならどうするんだろう...」
呟いてみても返事は当然無いけれど。
心地よい温かさに目を瞑れば、ゆっくりと睡魔に意識を吸い取られる。
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もち明太子 - 面白かったです!!!!続き下さい (2022年5月7日 12時) (レス) id: 5a52c0f3ec (このIDを非表示/違反報告)
Leo(プロフ) - 今までで1番面白くて、引き込まれた作品です。何度読んでも飽きなくて、この作品を楽しみに生活していたりします。先がとても気になりますが、無理せず頑張ってください! (2022年4月20日 23時) (レス) id: e098a97811 (このIDを非表示/違反報告)
文之 - やっべスッゲー面白いです。探し求めてた君みたいな人です。更新待ってます。 (2022年3月28日 20時) (レス) id: a1eefd9b06 (このIDを非表示/違反報告)
RIO - あ゛あ゛あ゛ーーっっ!!銀さんがぁ、イケメンすぎるっ(´Д⊂ヽ続きめっちゃ気になります!! (2022年3月27日 0時) (レス) @page24 id: 759836d8d0 (このIDを非表示/違反報告)
ドラゴン(プロフ) - すごくおもしろい!更新待ってます! (2021年5月18日 10時) (レス) id: cfbce6a52c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:□白澤□ | 作成日時:2021年1月22日 1時