今日もモブはモブらしく、ヒロインルートを外れます

引き攣る笑顔 ページ6

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首根っこ掴まれたらしい生徒は、宙ぶらりんになりながら目の前を走る車を呆然と見つめる。
助かった...。今はその事実だけが私の胸をなでおろした。





「よかった...本当に良かった....」



自身の状況をようやく読んだのだろう。安堵からか声を上げて泣きついてくる生徒。それを受け止め、抱きしめて。






「本当にありがとうございました..何とお礼を申していいのやら...」





ぼやける視界で見上げた先には、目を丸くしたままの銀髪の侍...

坂田銀時だった。






「あんた昨日の」





垂れる汗は暑さからではない。





｢ﾊﾊ....どうも...｣





どうしてこうもこの男と会うのか...
握る冷や汗と引き攣る笑顔が私の心情を物語る。




｢怪我してねーか?悪化してから慰謝料請求とか怖ぇから言うなら今のうちだぞ｣





はやく戻りたいけれど、生徒を助けて貰った以上失礼なことはできない。そして相変わらずこの適当さ加減。同級生として心配にすらなる。




｢ ...いえ本当に大丈夫ですから。その...先程は危ないところを本当にありがとうございました。それでは...｣




変にイチャモンをつけられないようにと最低限のお礼を並べ、生徒を連れ踵を返すように背を向けた。



...と、同時に思い出すのは昨日の落し物の件。





｢そうだ教科書..!｣



｢教科書?｣






思わず振り向き叫んでしまうと、首を傾げたその人も疑問符を浮かべて復唱する。





｢ あの汚ぇ本のことか ｣





少なくとも当時のあんたのものよりは綺麗だわ！と反撃したいところだが、すぐさま飲み込む。


それよりも気になるのは、さもあれを見慣れていないかのような口ぶり。

.....まさか、覚えてない...？



坂田銀時と言えば居眠り常習犯。まともに授業を受けていた姿なんて記憶にない。

そしてこれまた何の特徴もない教科書。記憶から消えていてもおかしくはない。



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