今日もモブはモブらしく、ヒロインルートを外れます

罠と対処法 ページ16

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誰もが振り返らない無個性な顔。
落ち着いた色の着物に、何の変哲もない足袋に草履。

可もなく不可もない髪を縛り直し歩き出す。



今日は久しぶりの休日。
モブの平凡な一日が始まる。




平凡な一日とは。皆さん疑問に感じただろう。

炊飯器のご飯が炊き上がった音と共に起床。
昨晩の余ったおかずも消費しつつ、結野アナのブラック星座占いを流し見する。食器洗いと洗濯物を干しながら今日と明日の夕飯を考え、決まる頃には身支度が終わり.....


今に至るまでの私のルーティーンは世界中の何億人の人々に共感されるのだろう。ベスト・オブ・モブ。教科書に載っていてもおかしくない。




しかし、ベスト･オブ･モブ受賞者の私の日常はそう容易くはいかない。




｢だ、だれか....｣




罠1、道のど真ん中に人間が転がっている。

メインキャラならすぐさま駆け寄り、助け起こすこの状況。
しかし、そんなボロボロの体でどうやってここまで転がって来たのか。事件に巻き込まれる香りがぷんぷんする。

その証拠に周りのモブ達も、さも彼が見えていないかのように素通りする。日本人のスルースキルを甘く見てはいけない。...なによりも普通に怖い。この町治安悪いし。


こういう時は、




｢もしもし。かぶき町一番街に人が倒れていて...はいそうです。はい。その角の大通りのど真ん中です｣




対処法その1、とりあえず遠くから通報。






罠2、メインキャラの巣窟である警察が駆けつける。

そう。これは最近判明した厄介な問題である。
この近辺を取り締まっている警察、通称真選組がこれまたメインキャラの巣窟。やはり一人メインを見つけてしまうとその周りには数十人以上メインがいると言う私の研究結果は間違っていないらしい。


そんなこんなで対処法その2は、





｢土方さんこいつですかｨ。通報を入れた奴はいねｪみたいですが｣

｢どいつもこいつもﾝな事の為に通報しやがって。ちょっとはテメーで介抱してやれってんだ｣





逃走。

危なかった。もう少し遅かったらあの無駄に顔の良い警官(あからさまなメイン)と接触してしまうところだった。





残念なことにこれらはまだまだ序の口。


回り始めて止まらない運命の歯車は、私からベスト・オブ・モブの称号を剥奪せんと絶えず襲いかかる。




問題の罠3はと言うと...




｢ わりっ...って朝日奈か ｣



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