Ep.13 ページ13
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「 今日はなに作るの? 」
「 カレーです。じゃがいもが安かったので 」
狭いキッチン。
にんじんを切る私の背後から覗くのはケロッとした神威さん。
「 わぁ、いいね。俺いっぱい食べるからさ、沢山作ってよね 」
「 みなさん勝手につまみ食いしていくので前から多めに作ってるんです 」
「 おい邪魔だ。どきな 」
「前は総悟君と私の分だけでよかったのに」なんて悪態を吐けば他人事のように笑う神威さん。そんな神威さんをしっしと手で追い払う真似をするのはエプロン姿の総悟君。
「 どうしちゃったの?総悟がちゃんと料理してるなんて 」
「 働かねぇとこいつが食わせてくれねぇんだよ 」
「 てめぇも手伝わねぇならどっかいきな 」
気だるそうに顎で私を指す総悟君。
神威さんはそんな彼を冷やかせば、飛び火が来たと逃げるようにリビングから出ていってしまった。
「 ねぇ、総悟君 」
「 なんだよ 」
「 神威さんの職業って知ってる? 」
「 さぁ。興味ねぇしアイツは答えねぇよ 」
総悟君と夜ご飯を作りはじめてもう1ヶ月も経つ。
すっかり見慣れた総悟君のエプロン姿に驚くなんて。確かに今思えば朝以外なかなか神威さんとは顔を合わせない。
先程も、あの女性をお客さんだと教えてくれたついでに質問しても「秘密」と笑ってはぐらかされてしまった。
隠されれば隠されるほど興味が湧くのは人間の性と言うものだし...
「 いたっ 」
「 ッばか何してんだ 」
包丁で切った痛みから我に返される。
...でも、秘密だということを詮索するのも如何なものだろうか。
「 手出せ 」
うーんとまたしても悩む私とは裏腹に、何やら絆創膏を取ってきてくれた総悟君。
あっという間に巻かれた指を眺めた。
「 余所見すんな 」
「 ごめんごめん。ありがとう 」
「 ッ... 」
へにゃりと笑えば何故か顔を逸らしてしまう総悟君。
言う通り悩んだところで何がどうなるわけでもない。
再び途中の料理に向き直った。
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S(プロフ) - めちゃんこ好きです!更新待ってます! (8月11日 14時) (レス) @page37 id: cc16e6db3c (このIDを非表示/違反報告)
春風 - 更新ありがとうございます!とっても嬉しいです!これからも楽しみにしています! (2022年11月30日 15時) (レス) id: 1ece860df7 (このIDを非表示/違反報告)
ツバサ(プロフ) - 更新待ってました…!すごい嬉しいです!銀さん作家だったんだと驚きでいっぱいです!あと文章の書き方がとてつもなく好きです、ありがとうございます! (2022年11月28日 8時) (レス) id: 1052176700 (このIDを非表示/違反報告)
むぎ - このお話大好きです…!更新待ってます! (2022年4月4日 18時) (レス) @page31 id: fc9ca49c49 (このIDを非表示/違反報告)
粥 - 何回見ても、ストーリー面白いし好きです!更新されること願ってます!!!! (2022年1月6日 23時) (レス) @page31 id: b23a2b20e9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:□白澤□ | 作成日時:2020年12月1日 12時