エピローグ ページ22
ここに来て何度目かの春が来た。ベルデン王国ルズベリー伯爵領は今日も平和である。
数年前にルズベリー家の当主は代替わりし、今はロナルド様が見事にその務めを果たしている。優しそうな見た目をしているが、意外とやり手な彼のおかげで前にも増して、ルズベリー伯爵領は発展していた。
クラリス様に関しては、もうすっかりアンダーソン公爵夫人として公爵家で立派に過ごしているそうだ。結婚してあちらに嫁入りする際、一緒に来て欲しいと頼まれたが丁重にお断りした。私だって一緒にいることができないのは寂しいけれど、立場やら状況やらを考えると非常に難しかったのだ。それで、頻繁に文通したり、たまに伯爵家に帰ってきたりを繰り返すうちに、ルイス様にはちょっとした目の敵にされてる気がする。夫婦仲のためにも限度は必要だ。
そして、アルバート様はというと、つい先日王都の貴族学校に入学したばかりである。出会った頃より背もずいぶん高くなって声も低くなって、大人になったかと思えば根っこはどこか昔のままで。王都へ向かう前に、
『学校を卒業して、その時ソフィアが独り身だったら俺がもらってやるよ』
と言われた。からかうのもいい加減にして欲しい。でも、そんなアルバート様はなんだか将来に悩んでいるそうで。あちらで何かを見つけてくれればいいと思う。
そして、私はというと……
「……ああ、ここにいたんですか。クレアは……寝てるみたいですね」
「はい。今日は暖かいですから。お仕事はもういいんですか?」
「主人がいないとやることもほとんどありませんから」
彼はそう言って私の膝上の黒髪をそっと撫でた。今日はいい天気だから外で本を読んで欲しいと娘に頼まれたのだった。彼は彼女を起こさぬように優しく抱き上げる。ふと、私の傍らにある、開いた本の上のものに目が止まった。
「それ、まだ使ってるんですね」
「もちろん。大事なものですもの。あの時枯らさずに押し花にして正解でした」
「まさかそんな方法をとるなんてあなた以外にはいないでしょう」
「いいじゃないですか。噂は本物だったんですから」
「そういうものですか」
「そういうものです」
私たちは小さく笑いあった。穏やかな春の日の午後、こうして歩いている時間が何よりの幸せだ。
昔より少し静かになったこの伯爵家で、私は、私たちは今日も楽しく過ごしています。
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お芋(プロフ) - しぇるふぃあ。((芦原晴))さん» わー!!再びコメントありがとうございます……!!そうなんです。彼は不器用なんで……ほんと!!(言葉にならない)そして、そうです!私自身彼らが大好きなのでもう少しだけ、騒がしい彼らの様子を書けたらな〜と思っております!お楽しみに! (2020年2月27日 23時) (レス) id: 105c0e2da2 (このIDを非表示/違反報告)
しぇるふぃあ。((芦原晴))(プロフ) - 本編は…ということは番外編や後日談が更新されるという解釈で合っていますか?楽しみすぎます…!! (2020年2月27日 23時) (レス) id: a3aac3bf63 (このIDを非表示/違反報告)
しぇるふぃあ。((芦原晴))(プロフ) - タイトル回収されてドキドキしました…ソフィアちゃんの告白が成功して思わず「やったー!」と喜んでしまいました( ´∀`)やっぱり両片想いだったんですね!一緒に働き続けたいがためにちょっと面倒くさくなってしまうグレンさんかわいくて大好きです!(続きます (2020年2月27日 23時) (レス) id: a3aac3bf63 (このIDを非表示/違反報告)
お芋(プロフ) - わさん» コメント、感想ありがとうございます!本編は完結しましたが、もう少しだけ続くので楽しんでいただけると幸いです(*^^*) (2020年2月27日 22時) (レス) id: 105c0e2da2 (このIDを非表示/違反報告)
わ - 早く続きがみたいです!!すごく楽しみにしています! (2020年2月27日 3時) (レス) id: 6d2dda4d98 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:お芋 | 作成日時:2020年1月14日 21時