二十六話 見送り ページ26
そうこうしているうちにルイス様がお帰りになる時間になった。ルイス様には私がクラリス様付きの使用人だと思われているので一緒にお見送りすることになった。
門の前には三頭の立派な馬がいる。ルイス様の従者はお二人……もしかして、馬車ではなく馬に乗ってやってきたのだろうか。流石騎士様である。
「今日はありがとう。クラリス嬢と話が出来て嬉しかったし、楽しかった」
「わたしも楽しかったです。ありがとうございました」
クラリス様は緊張する様子もなくやわらかく笑った。
「……ところで、クラリス嬢はどこか他家の催し物に参加する予定はあるだろうか」
「い、いえ、まだ決めておりません……」
クラリス様も決めてなかったんですね。ロナルド様のクラリス様を見る目が怖いです。
「では、どれか一緒に参加しないか。チェスター侯爵家のフルーツやお菓子は美味しいと評判らしいし、ルトブルク伯爵家の奥様は読書家だと聞く。あそこにはクラリス様と同じ歳のご令嬢いるはずだ。ひょっとしたら彼女も本が好きかもしれない」
「まあ、素敵！ぜひ行ってみたいです！」
そんな調子で会話を続ける二人はこの先も順調であろう。そう嬉しく思いつつも、少し遠くなったような寂しさを感じるのだった。
△▼△▼△▼
無事お見送りをし、夕食を食べたあと、私はエマさんから部屋に呼び出されていた。おそらく、昼の『……あとで話聞かせてね』のことだろうが、なんの話だか全くピンとこない。
(ま、まさか、何かしでかしてしまったとか……！？)
今日の行動を振り返っても特に不備はな……いや、あるな。クラリス様の様子を覗き見してしまったではないか。主犯はアルバート様だけど、アルバート様が全部悪いけど、立場上、止められなかった私に責任が回ってくるはずだ……そのことだろうか？きっと、そのことだ……！
言い訳を考えても思いつかず、ビクビクしているとエマさんがやってきた。
「いやあ、遅れてごめんね」
「い、いえ……それで、話って……？」
私が恐る恐る聞くと、エマさんは私の肩を掴んで言った。
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作者名：お芋 | 作成日時：2019年10月16日 21時
