十五話 返事 ページ15
「………………え？」
こ、婚約ゥ！？クラリス様とルイス様が？！クラリス様によれば、ルイス様とは話したことはおろか、会ったことすらないというのに！？
そんな衝撃を表に出さないように必死に隠す。
突然のことに戸惑いを隠せないクラリス様と、顔をほんのり赤く染めながら彼女を見つめる氷の騎士様をおいて、周りで聞き耳を立てていたお嬢様方は歓声を上げていた。
「い、いい、今の、聞きまして！？氷の騎士様が春の女神にご婚約を申し込まれましてよ！」
「ええ、しっかり聞いておりましたわ！ああ、ルイス様のあんな表情初めて見ました……まさしく、春の女神が氷を溶かしたのですね……！」
「ああ、ほんと、なんてお似合いなお二人なのかしら……！！」
声を必死に潜めているようではあるが、丸聞こえだ。春の女神……ってクラリス様のことだろうか。こちらも中々の二つ名を付けられたものではあるが、似合う呼び名である……ってそれより！返事は？
「……ほ、保留ということにはできませんか……？」
保留？！
振り絞るような弱々しい声での返事にルイス様は怒る様子もなく、納得したように言った。
「ルズベリー嬢がそう言うのも無理はない。何せ、言葉を交わしたのも初めてだからな」
そう言って固い表情からフッと嬉しそうに頬を緩めたその顔に何人かのご令嬢が倒れた音がした。良かった。ルズベリー伯爵家で、ある程度美形慣れしておいて良かった。
「では、近々ルズベリー伯爵家に訪問させていただいてもよろしいだろうか。そこでいろいろと話をしよう」
「は、はい……」
放心状態のクラリス様はなんとかそう返事をして、『今日はもう失礼します』と言い残し、おぼつかない足取りでその場をあとにした。
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作者名：お芋 | 作成日時：2019年10月16日 21時
