伯爵家は今日も騒がしい！２【オリジナル】 (ページ13)

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十三話お茶会ページ13

今日のクラリス様は一段と美しい。エマさんにより巧妙かつ華やかに結いあげられたストロベリーブロンドの髪は風に吹かれてキラキラと舞う。昼用のドレスは淡いミントグリーンで夏らしく、落ち着きつつも若い女性によく似合うデザインだ。
前日の宿ではあれだけ不満そうにしていたのに、いざ本番となれば柔らかく笑ってロナルド様の隣に立っていた。流石である。

招待状をアンダーソン公爵家の使用人に見せ、お茶会会場へ入れば、そこはとても華やかな空間だった。同じく招待客であろう人々はもちろん、綺麗に咲き誇るバラ園に、見た目も美味しそうな料理やスイーツ、細かなところまで気を配られた装飾というように、見たことも無い空間がそこにあった。

クラリス様の後をエマさんと並んでついていく。いっしょに会場に入ったロナルド様は早々にご友人を見つけたようで離れていき、アルバート様は気づけばいなくなっていた。人の合間を縫ってクラリス様はどこへ行くのかズンズン進んでいく。私たちより先に着いていた招待客の方々は、それぞれ何人かに固まって談笑していた。

「ねえ、あのお方はどなたかしら。なんてお美しいのでしょう」
「あら、知らないの。あちらの方はルズベリー伯爵家のクラリス様よ。あのロナルド様の妹君よ」
「まあ、ロナルド様の！」

そんな会話がチラチラと聞こえてきて、私は本人でもないのに嬉しくなってしまう。

(そうでしょう、そうでしょう。お美しいでしょう！)

ニヤニヤしそうになるのを必死にこらえ、私は歩き続けた。

△▼△▼△▼

主催者のアンダーソン公爵夫人が挨拶を済ませ、いよいよお茶会が始まった。
どうやら食事は自由に取って食べる形式のようで、私は適当に選んで屋根の着いた場所で座っているクラリス様の元へ持っていった。

「どうぞ、クラリス様」
「ありがとう、美味しそうね」

そう言って微笑むクラリス様はやっぱり美しいけどどこか覇気がない。ボーッとどこか遠くを見ながら黙々と食べ続け、呟いた。

「…………早く終わらないかしら」

その小さなつぶやきは会場のざわめきに飲まれ消えていった。