五話 喧嘩 ページ5
その後、本を部屋に運んで退出しようとすると、恥ずかしそうにクラリス様は『もしよかったらソフィアも読まない?一巻から貸すから。ね?』と言った。
私は喜んで応じた。初めて読んだ当時はおもしろくて暇さえあれば読みふけっていた。その後は母の看病でなかなか読む時間も無くなってしまった。内容も詳しくは覚えていなかったのでありがたい。
読み終われば、休憩時間のティータイムで本のやり取りをし、感想を話しあった。
「二人だけで話すのやめろよ!俺もいるんだけど!」
「じゃあ、アルも読んでみる?おもしろいわよ」
「本は好きじゃない。恋愛ものは尚更だ」
そう言うとアルバート様はブスッとした顔をする。たしかに、最近はクラリス様と本の話ばかりしている。自分のわからない話題で盛り上がられては楽しくないだろう。
「だいたい、この時間は俺とソフィアのためのものだっての!勝手に入ってきたくせに独り占めするなよ!」
「アルはわたしのいない間にいっぱいソフィアとお話してたんでしょ。少しくらいいじゃない」
「よくない!」
突如始まる兄妹喧嘩にオロオロと二人を見る。三人でのティータイムなのだから、三人で楽しめる話題にしなければならない。それをすっかり忘れていた。
そう考えている間にも口喧嘩は続く。
「そうやってまわりを見れないから学校でも友達できないんだろ!ほんと社交苦手だよな!」
「なっ!そ、それを言うならアルだってそうじゃない!王家以外の招待状は全部断って領地に篭もりきりで!」
「あんな窮屈で嘘まみれで香水くさいところに行きたくもないからだ!そんなとこよりも鍛錬場で動く方がいい!」
「じゃあ、ソフィアとおしゃべりするんじゃなくて、鍛錬場でエヴァンとかと手合わせしてたらいいじゃない!」
「それですよ!」
いいことを思いついた。三人なら二人で話していれば一人余ってしまう。もう一人増えれば……
「エヴァンくんもここに誘いましょう!」
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作者名:お芋 | 作成日時:2019年10月16日 21時