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三話 一年間の雇用契約 ページ3

「つ、疲れた……」

あれからずっと使用人の心得や礼儀作法を叩き込まれて、ヘロヘロになりながら与えられた部屋に帰ってきた。持ってきた荷物はミリアさんに駆り立てられて急いで使用人の服に着替えた時に無造作に置いたものがそのままになっている。部屋の片付けはとりあえず後にしよう、うん。そうしよう。

風呂に入り、ベッドだけは整えて横になる。私はぼんやりと今日教えられたことを頭の中で思い出していた。

『使用人はそんな大きな声を上げるんじゃありません』
『今のところソフィアさんがいちばんの新人なんですから敬語は絶対です。慣れれば自然に身につきます』
『使用人たるもの、そんなにコロコロと感情を表に出してはいけません』
『姿勢が悪い!もっと背筋を伸ばして!』

……当たり前だけど、定食屋で働いてた頃とは違うのだ。指導が入っている間はミリアさんの時間も取ってるし、お給金にも影響がでる。なんとか早く身につけないと!

『一年間っていう雇用契約だけど、ソフィアさんにはきっちり学んで立派なルズベリー家の使用人になってもらいます!』

指導で最初に言われたことを思い出した。そう、私は一年間のみの契約でここに来た。
一年間で母の病気が治るかはわからないし、薬代が払いきれるかはわからないけど、伯爵家の使用人として働きたいと言ったところ兄が猛反対したのだ。

『やだ!ソフィーと離れたくない!何かあったらどうするんだ!身体壊したりお兄ちゃんに内緒で恋人とかつくったり……はっ、恋人!?やだやだやだ!ソフィーはオレと結婚するって言ったのに!』
『いつの話よ!他所で働くのはお母さんの薬代のためって言ったでしょ!子供みたいに駄々こねないでよ、もう22でしょ!』

なんとか一年間だけで納得してくれた(と思う)けど説得するのは本当に大変だった。私と同じ白髪を掻きむしり、紫色の目を潤ませて抗議する様子は妹の私でもさすがに引いたものだ。

(伯爵家だし、騎士団もあるから安全なのに……十年も前のことを気にしすぎよ。私はもう平気なのに)

それまでは普通に仲の良い兄妹だったのに、あの日から兄の過保護っぷりが尋常じゃなく増した気がする。その過保護っぷりのおかげで今の私があると思えばありがたいことだけど。

(だいたい、私の恋人の心配するくらいならさっさと自分も恋人つくりなさいっての!)

兄への不満をぶつけつつ、私は重くなる瞼に身を任せ、眠りに落ちていった。

四話 女の子→←二話 使用人の基本



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設定タグ:使用人 , メイド , 貴族   
作品ジャンル:ラブコメ, オリジナル作品
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お芋(プロフ) - シャル@如月唯奈さん» 読んでいただいて、ありがとうございます!お褒めに預かり光栄です!頑張ります。ありがとうございます!! (2019年9月18日 19時) (レス) id: 105c0e2da2 (このIDを非表示/違反報告)
シャル@如月唯奈(プロフ) - イベント参加ありがとうございます!早速読ませていただきました!凄く分かりやすくて良い小説ですね!何より主人公かわいい(*≧з≦)これからも更新頑張ってください〜 (2019年9月18日 19時) (レス) id: 0214723abe (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:お芋 | 作成日時:2019年9月6日 17時

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