1話 ページ2
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夏休み、なんだかとってもいい響き。
夏を休む、つまりこの暑い夏を家で過ごし体を休める、学生のありがたい制度。
家の中で涼まりながら冷たいモノ、そう例えばアイスなんかを食べるのが正しい生活だと思うのであって……
「さっきから何ブツブツ言ってんだ」
モノクル越しで視線がぶつかった。怪訝な顔。きれいな青を覗くにはあまりに近い距離。
しかしそれも、最近はずいぶん見慣れたもので。
白いマントはバサバサと夜の空に、はためく。
はぁ、と大きなため息をついた。
本日の怪盗業も終わりお空を飛んで帰宅途中。
夏休みなのになぜ私は犯罪業に勤しんでいるのだろうか。
最近はというと、照明ボタンの押し間違えも減り、空を飛ぶことにも少し慣れ。
今だって気絶しないで抱っこされているのである。
人間慣れってほんとこわい。夏休みなのに私、何してるんだろう。
「家でアイス食べたいなぁ。」
「オレ、チョコアイスな」
「なんで、私が奢る流れになってんの」
「……あ、なんか手ェだるくなってきたかも」
「……落としたら承知しないから!!!」
最大限に睨みを利かせながら顔を近づけて詰め寄る。うおっ、と仰け反るから一瞬不安定になるグライダー。浮遊感に顔をしかめる。
「ちょっと!操縦くらいしっかりしてってば!」
「オメーが顔近づけてくるからだろ!」
「置いていく、とか笑えない事いうからでしょ」
「ジョークだろ?つまんねーな」
「私もこんな生活つまんないっての」
ふと1学期末に配られた進路の紙が頭によぎる。
なんども言うが高校2年時の夏休みなのだ。そろそろ将来を見据えて………。
既に前科付きの私の将来ってなんだ。顔を上げた先の景色のように暗闇が広がっているのでは。夜風が髪を攫ってゆく。
「まあでも、」
暗い気持ちに沈んだ私は彼の声に顔を上げた。
「怪盗業もしばらく休みだし」
「えっ!嘘!?ほんと!?」
「おい、ちょっ!暴れるなって!!」
急に舞い込んできた休暇。
「なんで?なんで?」
興奮気味にその続きを待つ。
「……まあな、色々あって。」とすぐ続けて
「てな訳で家で休んどけ。終わったらすぐ再開すっから。」
意味ありげな瞳の奥も、わざわざ詮索する気にすらならない。結構どうでもいい。
だって、目の前に休みがあるのだから。
「うん!!そっちもどうぞごゆっくり〜」
そう息巻いた私を見た彼のため息も、夜闇に消えていった。
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琉星(プロフ) - 続きが読みたいのでパスワード教えて頂きたいです (4月30日 11時) (レス) @page19 id: 7ae148b3cd (このIDを非表示/違反報告)
ゆずちゃ(プロフ) - 今読ませていただいてとても素敵な作品だったので続きを読みたいと思ったので是非パスワードを教えていただきたいです! (4月30日 8時) (レス) id: a45d125949 (このIDを非表示/違反報告)
くり - 続きを読みたいです!パスワードを教えていただきたいです! (4月24日 18時) (レス) id: b0169ec3e3 (このIDを非表示/違反報告)
あいり(プロフ) - パスワード教えていただきたいです (4月23日 4時) (レス) id: fefd0b677e (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - 面白いです!続き気になるのでパスワード教えていただけませんか? (4月23日 0時) (レス) @page19 id: 544fb55cbc (このIDを非表示/違反報告)
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