2話 ページ3
_
しかしそうやって喜んでいたのも束の間のことで。
それは、あれから数日もたたないうちであった。
「ほら、これだよこれ!」
阿笠邸から数メートル離れた路地裏。彼は小さなポケットから折りたたまれた紙を取り出した。
私はそれを横目で見る。出会い頭から既に雲行きが怪しい。
コナンくん……もとい新一が楽しげにしているときは、たいてい厄介事と一緒だということは、幼馴染の私はよーく知っていることだった。
やはり、なんでも奢るからという言葉にホイホイ釣られるべきではなかった。
わかっていた、絶対めんどくさいことになると。でも、夏休みの課題に詰まっていたのもまた事実で……。
解けた参考書と、フルーツパフェはすでに胃の中であるから、後の祭りだ。
仕方ないと腹をくくり、その紙を渋々見る。
「あぁ、シンガポールのやつ。」
新一が見せてきたそれは、強面の男の人が大きく一面を飾るポスターの縮小コピー。
今度園子の恋人である京極さんも出場する空手大会の案内であった。
優勝者には、なんかすごい宝石みたいなのが付属してるチャンピオンベルトももらえるとか、なんとか。
「オメー知ってんのか?」
目を丸くした彼だが、私の方こそ彼が知らなかった事実にびっくりである。
「私、蘭ちゃんに誘われてるんだよ。」
これまた、私の休みの間に、だ。
どうしても夏休みは私に回ってこないらしい。
そんなわけであまり乗り気ではなかった。
それに誘ったらしいメンツはカップル2組。私はただのお邪魔虫だろう、そう思っていたのだけれど
「_____だってアイツすぐいなくなるんだもん!」
……たしかに。
そう思った私は悪くない。誘われた日、蘭ちゃんがそうこぼしたのである。
アイツというのは、もちろんこの目の前のラブコメ探偵のことである。
実際、事件が俺を呼んでいると言わんばかりに次々とまあ首を突っ込んでいく。
こんな小さな探偵になったのだって、彼がデートをほっぽり出して起こった後の災難だし。
探偵の性だとか、目の前の小学生はきっと懲りずに口にするかもしれないが、蘭が怒るのもごもっともだと思うのである。
異国の地で1人にされるのは流石に寂しい。
彼女の振り回されっぷりには同情するので行こうかなと思ったり、思わなかったり。
それに、どうせ”新一”はいけないし、江戸川コナンのパスポートなんてものもない。
とまあこんな私の事情もつゆ知らず彼は。
792人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「名探偵コナン」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
琉星(プロフ) - 続きが読みたいのでパスワード教えて頂きたいです (4月30日 11時) (レス) @page19 id: 7ae148b3cd (このIDを非表示/違反報告)
ゆずちゃ(プロフ) - 今読ませていただいてとても素敵な作品だったので続きを読みたいと思ったので是非パスワードを教えていただきたいです! (4月30日 8時) (レス) id: a45d125949 (このIDを非表示/違反報告)
くり - 続きを読みたいです!パスワードを教えていただきたいです! (4月24日 18時) (レス) id: b0169ec3e3 (このIDを非表示/違反報告)
あいり(プロフ) - パスワード教えていただきたいです (4月23日 4時) (レス) id: fefd0b677e (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - 面白いです!続き気になるのでパスワード教えていただけませんか? (4月23日 0時) (レス) @page19 id: 544fb55cbc (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ