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「それにしても、世間ってのは狭ェな」
彼は、ストローを咥えながら片手にチョコのドーナツ。
紙カップの中身はブドウの炭酸ジュースだ。どうやら、甘いものが嫌いではないらしい。そこも新一くんとは違うな、と考えた。
「制服着てるから、帝丹だろうとは思ったけど、まさかあの有名人と、同級生で幼馴染だったとは」
「まあ数年ぶりにこっちに帰ってきたから、帝丹に通ってるって言ってもまだ少しなんだけど…」
あのあと、誘われるまま近くのドーナツショップに入った私たちは、テーブル席に腰掛けて、会話を楽しんでいた。
偶然知り合ったばかりの人と、こんな風にお茶している。
彼に連れられて(というか惑わされたに近い気がするほど)、いつのまにか店に来ていたけれど、こんなの私の柄じゃなさすぎる。
何度も言うが、先ほど知り合ったばかりなのだ。
でも、彼は至って普通のことのように過ごしている。
こういうのに、慣れているのだろうか。
ま、まあ、私ももう17歳だし。
彼も同学年のようだし。
マジックは、すごかったし。
それに、
それに、新一くんに似てる……し。
なんて好奇心と下心は、本人を目の前に絶対に言えないけれど。
ちなみに、私はミルクティーの砂糖多め。私も甘いものは嫌いじゃない。
「というか、もしかして新一くんと知り合い?」
とんとん拍子の展開に、まさか仕組まれているのでは、と疑うと
「まさか」
彼は肩をすくめる。
「オレはただの一般人だから」と。
「良ければ、新一くんのこと、紹介するよ!ほら、自分のそっくりさんって新一くんも気になるだろうし……」
それを聞くと、彼は笑って「遠慮しとく」と。
「ほら、実はどっちかが偽物で、ドッペルゲンガーだとしたらヤベーだろ?」
「そうじゃない…って言い切れないくらいにソックリだから、複雑かも」
彼のおどけた様子に合わせて、私も笑って見せた。
しかしまあ、初対面とは思えないほど、彼と話すことにぎこちなさは感じない。
無邪気であどけない笑みがそうさせるのだろうか。
話を聞き出すことが上手な彼は、なんでも話せてしまうような調子で、私の相槌を打ち、時には口を挟む。
新一くんがすぐ事件に行ってしまうこと、サッカーが上手なこと、ずっと蘭という幼馴染を待たせていたこと、その二人が付き合い始めたこと。
新一くんではない。
そうは思っていても、久しぶりに二人で話しているような錯覚に陥るくらいには、出会った時を感じさせない、不思議なものだった。
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レイ(プロフ) - 場違いですいません、Frisk様、怪盗とバカのパスワードを教えてください! (2月18日 5時) (レス) @page2 id: 70d784bd19 (このIDを非表示/違反報告)
Frisk(プロフ) - 志逢さん» コメントありがとうございます!好きと言ってもらえて嬉しいです〜♡キラキラ笑顔の黒羽くんも高校生らしくて可愛いですよね、わかります… 犯沢さんはアニメしか見てないのですが面白かったですね!これからもよろしくお願いします。 (2023年1月6日 23時) (レス) id: 3382e552a4 (このIDを非表示/違反報告)
Frisk(プロフ) - まみこさん» 犯沢さんにキッド様出演してて最高でしたね〜作画もめっちゃよかったし叫んじゃいました。短編もご要望ありがとうございます♡また、集まってきたら短編集を作ろうかな…とちょっと考えました笑 (2023年1月6日 23時) (レス) id: 3382e552a4 (このIDを非表示/違反報告)
志逢(プロフ) - この作品スゴい好きです!個人的にはキラッキラな笑顔向ける黒羽くんが好きです…(笑)犯沢さんの漫画全巻持ってます。期間限定短編なのが悲しいですがこれからも頑張ってください! (2022年12月26日 9時) (レス) @page15 id: d110183434 (このIDを非表示/違反報告)
まみこ(プロフ) - あの、二回目のコメントすみません!!犯沢さん私もみてます、、!素敵な作品ですよね!!私も最推しほどじゃないけど白馬くんすごい好きで、初登場でめちゃくちゃ喜んでしまいました……!!期間限定公開なのが少し寂しいです、、よければずっと公開して欲しい((殴 (2022年12月13日 1時) (レス) @page15 id: 9d3f4398ec (このIDを非表示/違反報告)
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