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「ぱ、パイモン…旅人を…蛍を呼んできて欲しい、二人で話したいことが…ある」
「大丈夫かA？すっごく顔色が悪いぞ…？」
「大丈夫、大丈夫だから…はやく」
「お、おう。わかったぞ」
心臓がドクドクと煩い程鳴っているのが分かる、それくらい動揺している。
空が？空が蛍の兄で？アビス教団の殿下？今から蛍と話す？何を？何を話せばいいって言うんだ
兄を知っていたこと？アビスに深く関係がある事？二人が追っているのが僕の上官だってこと？
今朝の夢と相まって吐き気がする、カーンルイア、アビス、空…蛍。
その場に蹲っているとザリ、と靴の擦れる音と共に優しい落ち着いた声がした。
「A…？大丈夫？話って何？」
「…蛍」
旅人、と呼ばなかった僕に違和感を覚えたのか僕の額に手を当ててきた。
自分も辛いだろうに、消化できていないだろうに、この子は他人を心配するんだ。
昔もこうだったっけ…3人でいた時はよく心配されていたな。
「君は本当に…本当に空にそっくりだな…」
瞬間、とんでもない力で肩を掴まれた。弾かれる様に上を向けば目を見開いた蛍が必死な形相で問いかけた。
焦った様な悲しい様な、寂しさを隠せない顔で蛍は涙を浮かべていた。
「空を、空を知ってるの？！私の！私のお兄ちゃん！」
「蛍、落ち着いて…ちゃんと話すから」
「あ、ごめ、その…私…」
「パイモンから聞いた…色々辛かったよね、そばに行けなくてごめん」
頭を撫でるととうとう決壊したのか顔を埋めて嗚咽を出して泣き出してしまった。
知らない世界で、肉親に突き放され、心が不安定にならない訳がない。ましてやこの子はまだ子供だ。
腕や手で涙をぬぐう蛍をそっと抱き寄せて、背中を摩る。
「蛍…今から話すのは、僕が体験した空との出来事…聞いてくれる？」
鼻を啜りながら腕の中の蛍がこくりと頷いたのを感じて、僕は口を開いた。
それは、蛍と出会う前に出逢った一人の異邦人とのお話。
500年前に突如としてカーンルイアに現れた空は、その地で生活を始めた。
元素の痛みに慣れないまま要監視対象であったカーンルイアを放浪していた僕に手を差し伸べてくれたのが空だった。
空は見知らぬ僕に良くしてくれて、旅の話や蛍の話をよくしてくれていた。
僕がダインスレイヴと出逢ったのも丁度その頃だった。
カーンルイアの民は実力主義な所があり血で血を洗う様な戦いが絶えず、苦手な場所だったけれど空のおかげで少し好きになれた。
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作者名：光 | 作成日時：2023年9月17日 22時
