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伊野尾side
震える手で光の家のインターホンを押し、ずるずるとドアに背中を預けて座り込んだ。
深夜2時、街が寝静まった夜に響くのは
俺が小さく鼻をすする音だけ。
妙に研ぎ澄まされた感覚の中、布越しに触れる汚れた床は酷く冷たくて。
不意に山田の腕の中が恋しくなった。
あの溢れかえる優しさに包まれたくなった。
ああ、もしかしたら俺がいなくなっている事すら彼は気づいてなんてくれないんじゃないか。
山田、『めんどくさい』って言ってたから、もし気づいたって探してなんてくれないんじゃないの。
「……寒いよ……やまちゃん…… 」
真冬の凍てついた空気を何度も吸い込んだ喉奥は、まるで息を切らしながら走った後かのようにひゅーひゅーと変な音を立て始め、鋭い痛みが鼻腔から喉にかけてを襲う。
夜風に晒された素足は地面に擦れたのもあってか真っ赤に腫れて、膝に滲んだ血が、山田に買ってもらったジーンズを汚した。
「〜〜ッ、はは……俺、わるいこと……したかな。」
ただ一緒に笑ってご飯でも食べれたら。
隣で肩を寄せ合ってベタな恋愛映画でも見れたら。
彼の優しい腕に抱かれながら同じベッドで眠れたら。
「なんて、」
……そんなこと、初めから思わなければ。
これ以上体温を逃さない様に丸くなって、薄く血の匂いがする膝へと顔を埋める。長い時間外気に晒されていた鼻頭は膝元に僅かに残った体温に滲みた。
……暗く、寒い空間で。
胸に襲い来るのは過度な期待をした自身への嫌悪感。
そんな負の感情から逃れようとする為か、とっくに治ってしまった筈の睡魔が催眠をかける様に俺の瞼を塞いでゆく。
ぐらぐらと揺らいだ意識の隅っこで、バサリ、袋のようななにかが勢い良く床に落ちる音だけが小さく小さく俺の鼓膜を刺激した。
奥に佇む人物が落とした何かを拾い上げる。
なんとか目を開けて確認しようとするけど、ようやく開いた視界は焦点が合わず白黒して、人物を正確に捉える事も儘ならない。
________コツ……コツ、
軈て、無音という音すら無いような静寂を掻き切る様に、誰かが近づいてくる足音がやけに大きく響いた。
「ッッバカ！！こんなとこでなにしてんだよ！！」
温かな手のひらが俺の頬に触れる。
ゆったりと頭に馴染んだのは、昔から聞き慣れてきたあの声で。
「ひ……か、る……」
安心感からか、どっと心に渦巻いていくものが全て流れ出る様に、俺の目からはボロボロと涙が溢れた。光は黙って俺のことを抱きしめ、ぽんぽんと背中を撫でる。
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ひまちぃ(プロフ) - うさこさん» うさこさんありがとうございます！！コメントすごく嬉しいです😆次回作も力を入れて頑張りたいと思います！！ (2022年7月13日 19時) (
レス) id: aaba219193 (このIDを非表示/違反報告)
うさこ(プロフ) - こんばんわ。やっと仲直り😊いのちゃんの気持ちを思うと泣けてきちゃってずっと気になっていたのでハッピーエンドになって嬉しいです🙂次の作品も楽しみにしています。 (2022年7月13日 1時) (レス) @page49 id: f4957992c9 (このIDを非表示/違反報告)
ひまちぃ(プロフ) - Rinさん» ありがとうございます！！コメント本当に嬉しいです！！最近は更新頻度も落ちてきてご迷惑をおかけしていることは承知ですが、気長にお待ちいただけると幸いです。 (2022年7月8日 21時) (レス) @page45 id: aaba219193 (このIDを非表示/違反報告)
Rin - このシリーズすっごくすっごく好きです！！この後の展開が気になって仕方ない書き方をされるのでワクワクが止まりません！早く続きが読みたいです！待ってます！！ (2022年6月30日 19時) (レス) @page44 id: b5ace0fd89 (このIDを非表示/違反報告)
ひまちぃ(プロフ) - ぬんさん» コメントありがとうございます！！すっごく嬉しい感想で、静かに喜びを噛み締めてます……！！これからもどうかご愛読ください！！ (2022年6月19日 19時) (レス) id: aaba219193 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ひまちぃ | 作成日時：2022年3月9日 12時
