危ないところだった気がする… ページ44
Aは自分の名前が不意に呼ばれ、ついミケが話しかけてくれるようになったのかと思った。
しかし、Aの期待は外れ、その声の主に気づいて思わず後ずさりした。
イル) ！！
イルミはAが顔を上げるなり驚き、そして近づいていった。
Aは必死にどう言い訳をしようかと考えを巡らせている。
ｷﾞｭ
イルミはAに手を伸ばし抱き寄せた。
A) ？！
あ、あの、イルミ、落ち着いて聞いてくれ、これには深い訳が
イル) いいよ、別に。
どうせ、キルに手伝いを頼まれてたんでしょ。
俺を足止めするようにって。
Aは図星をつかれて口ごもった。
イル) そのために俺と楽しそうに話してたってのはムカつくけど、今は許してあげるからさ。
…早く、泣きやみなよ。
A) え、いや、違
イル) 違くない。お前、泣いてるじゃん。
A) そっちじゃない！！
Aが不意に声を荒らげ、イルミは驚き腕の中のAを見つめた。
Aは先程まで泣いていた時の表情とは打って変わって怒っているように見える。
イル) 何、怒ってんの。怒りたいのはこっちなんだけど。
A) 俺は、確かにキルアに協力するためにお前を足止めしようとしてた。初めは…。
でもっ、イルミを見た瞬間その事忘れるくらい懐かしくて会えたことが嬉しくて、だから、足止めするために楽しそうにしてたとかじゃない。
純粋にお前と話すのが、共にいる時間が、楽しかったんだ！
Aはそう言ってまた瞳を潤ませている。
イルミはしばらくその真っ直ぐで美しい瞳から目をそらせず、身動きせずに見つめていた。
イル) …ねぇA、好き。好きだよ。
イルミは抑えきれない感情をとうとう言葉として零してしまった。
自身の仕事柄、全く相応しくない感情がイルミの中を埋めつくした。
Aはイルミの言葉に驚き、溢れだしていた涙が止まった。
A) …は、
イル) 前からずっと、お前が好きだった。
イルミはAの頬に手を添え顔を近づけた。Aはあまりの予想外に翻弄され抵抗しない。
Aと、イルミの距離が残り1cmという所で
ﾌﾞｰﾌﾞｰ
！！
ｺﾞｯ
Aの携帯が再度鳴り響いた。
Aは我に返り、近すぎるイルミの距離に驚き頭突きを食らわせた。
イル) ｯ!!
イルミは容赦ない頭突きに顔をゆがめてAを離した。Aは直ぐに距離をとって、イルミの様子を伺った。
A) (よ、よく分からないが危ないところだった気がする…)
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作者名：シロ | 作成日時：2019年11月3日 22時
