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「日高さんはもし、この時から少し先の未来で、私に今回のような問題が起こると知っていたら……最終審査で私をメンバーに選ぶと断言できますか?」
「…………」
「これから先の茨の道が、私にも日高さんにも想定外の、とんでもないモノになる可能性だって0じゃ無い。
いつだって私が日高さんの期待に応えられるとも限らないし、その度にメンバーを不安にさせてしまう私と、旅路を共にしたいと思いましたか?」
“家族と向き合ってほしい”
口にされなくても分かった、日高さんにとって当たり前の期待に応えられなかった私は、その時点で確実に彼の想定からは悪い意味で外れている。
どんな答えが来るのだろう。
日高さんは大人だし、本音は話さないかもしれない。
それでも彼の口から 聞いてみたかった。
ふと彼の視線が、今日持ってきたD-28へと移る。
そういえばこの後、弾き語り練習の進捗度合いを聞かせてと言われていたんだ。
「……ミヅキ、未来に何が起こるかなんて誰にも分からないよ」
静かに答えを話し出した日高さんは、持っていたグラスをテーブルに置いて、そっとD-28のケースを撫でる。
「もしかしたら明日、これまであった常識が崩れて 僕たちを取り巻く日常は 元に戻せないほど壊れてしまう可能性だってある」
「でもミヅキなら、きっと乗り越えていける。そう思ったから君の手を取った」
「その選択が明日の僕たちをどうするかは 正直なところ分からなくて、ただそれでも僕は力の限りを尽くして、君と、彼らと……僕自身が幸せになる道を進む」
ケースを撫でていた手を、今度は左胸に持ってくる。
そしてギュッとTシャツを握って、私に笑いかけた。それは穏やかじゃなくて、苦しそうにも見える顔で。
「出会った日に心臓を掴まれた。あの瞬間から、ミヅキのいない音楽人生を、あまり考えられなくなったんだ。
ミヅキが僕のそばにいるとなった時
1番望む道がBE:FIRSTなのだとしたら、
……やはり僕は何度でも、君をBE:FIRSTのメンバーに選ぶよ」
じんわりと視界が揺らぐ。
みっともなく泣き出さないようにズッと鼻を啜った。
「何故なら、君がここにいることが僕の幸せだからね」
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befirst(プロフ) - あらしのよるに大好きすぎてなんっっかいも読み返しています!! (11月27日 20時) (レス) id: 73aa1688da (このIDを非表示/違反報告)
白(プロフ) - masayo_8さん» 書き手の私、超無意識に寿司桶空っぽにしておりました!たしかに、変わらず食欲旺盛で可愛い笑 おばあちゃんもおばさんも、きっとママから旦那がどんな人なのかは聞いていなかったんですよね…まさに神(読み手)のみぞ知る事実なのです、悔しいことに。 (5月17日 22時) (レス) id: 2167f4606f (このIDを非表示/違反報告)
masayo_8(プロフ) - なかなかの内容なのに、きっちり寿司桶を空っぽにするモンさんを、愛してやまないっ(◕દ◕)そういえば、おばあちゃんも、おばさんも、生きてるとは言ってなかったなぁと、解説を見て思いました!天才っ!! (5月17日 15時) (レス) @page50 id: be11c96dd8 (このIDを非表示/違反報告)
白(プロフ) - まおさん» まおさんありがとうございます♡登場人物の気持ちが大きくなればなるほど、描写を書いては消して……この人こんなこと言わんよな、もっとらしい言葉はないかなと考えながら書いているので、そう言ってもらえて嬉しいです。 (5月16日 11時) (レス) id: 2167f4606f (このIDを非表示/違反報告)
白(プロフ) - とんトンさん» ネタバレ私は大歓迎ですよー♡笑 わー、見てくれてるって嬉しくなりますしね!リルアワとのリンクも楽しんでいただければ! (5月16日 11時) (レス) id: 2167f4606f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:白 | 作成日時:2023年4月7日 23時