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日高さんは、進む先は茨の道だと言った。
私自身それに納得して、自分の為にその道を進むと決めた。
ただその茨の一つが、
自分の過去から来るものとは思いもせずに。
(日高さんは後悔してないのかな)
この私を選んだこと。
デビュー前に問題を抱えた私がメンバーにいること、彼は正直どう思っているんだろう。
『ただ忘れないで欲しいのは、これからの道は君1人ではないということ。ミヅキの旅路にどうか僕を……、
そしてここにいる仲間達を、共に行かせてほしい』
この言葉をもらった時、私はこの先の自分の未来に誇りを持つことができた。今だってその気持ちは変わらなくて、彼のもとで 自分の力をめいいっぱい輝かせて高みに登っていきたいと思う。
でも、日高さんはどうだろう。
強靭な怪物だと評価する私が、こんな簡単に不安定になる事は 流石の彼でも想定外だったんじゃないだろうか。
それでもまだ、心から、
私と旅路を共にしたいと思ってくれているのかな。
「…………その表情の意味を、聞いてみたいな」
「え、?」
「話せたらでいいんだけど。ふふっ……、ミヅキの表情は前より うんと分かりやすくなったね」
「………」
私はそんなに酷い顔をしていたんだろうか。
オーディションのエンディングが流れる画面から視線を外し、もうネタが無くなった寿司桶へとそれを落とす。
「……もし、ニコちゃんが最終審査まで残ってたら、日高さんは私を選んでたのかなってちょっと思いました」
「ああ。それはどうだろうね……。合宿の2次審査時点ではまだ君たちは甲乙付け難かったし、そもそもあのまま2人が残ってたとしても、最終審査に進む女子は1人だけにすると決めていたんだよ」
パッと日高さんを見る。
向き合った彼は、オーディションの時によく見た こちらの眼の奥を探るような面持ちをしていた。
「ニコがあのまま進んで、どうなったかは最早知る術はない。ただTo The Firstで君が見せた伝説的な煌めきに対して、あの時点で『ミヅキを選ばない』という選択肢は無かったと断言できる。
例えば何度THE FIRSTを繰り返したとしても、あの場で見せたパフォーマンスがあれば、僕はミヅキをファイナリストにする他ないと思ってるよ」
言い終えた後 優しい笑みを浮かべる。
子供じみた たらればに、真剣で優しい答えをくれる日高さんは、どれほど器の大きい人なんだろう。
「不安に思ってることはそれだった?」
その問いかけに、小さく首を振る。
日高さんはきっと分かってる。私が本当に聞きたいことが、そうじゃ無いってこと。
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befirst(プロフ) - あらしのよるに大好きすぎてなんっっかいも読み返しています!! (11月27日 20時) (レス) id: 73aa1688da (このIDを非表示/違反報告)
白(プロフ) - masayo_8さん» 書き手の私、超無意識に寿司桶空っぽにしておりました!たしかに、変わらず食欲旺盛で可愛い笑 おばあちゃんもおばさんも、きっとママから旦那がどんな人なのかは聞いていなかったんですよね…まさに神(読み手)のみぞ知る事実なのです、悔しいことに。 (5月17日 22時) (レス) id: 2167f4606f (このIDを非表示/違反報告)
masayo_8(プロフ) - なかなかの内容なのに、きっちり寿司桶を空っぽにするモンさんを、愛してやまないっ(◕દ◕)そういえば、おばあちゃんも、おばさんも、生きてるとは言ってなかったなぁと、解説を見て思いました!天才っ!! (5月17日 15時) (レス) @page50 id: be11c96dd8 (このIDを非表示/違反報告)
白(プロフ) - まおさん» まおさんありがとうございます♡登場人物の気持ちが大きくなればなるほど、描写を書いては消して……この人こんなこと言わんよな、もっとらしい言葉はないかなと考えながら書いているので、そう言ってもらえて嬉しいです。 (5月16日 11時) (レス) id: 2167f4606f (このIDを非表示/違反報告)
白(プロフ) - とんトンさん» ネタバレ私は大歓迎ですよー♡笑 わー、見てくれてるって嬉しくなりますしね!リルアワとのリンクも楽しんでいただければ! (5月16日 11時) (レス) id: 2167f4606f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:白 | 作成日時:2023年4月7日 23時