16-5 ページ40
.
あの時の悔しさが、同じように今 込み上げてくる。
Aを傷付ける奴をどうする事も出来ないまま、俺は、それでもこいつを守りたいと 側にいたいと思って自分の言葉を紡ぐ。
「俺は
音楽がなくても、お前を探し出して会いに行った」
再会してからしばらくたった日に、
“独りぼっちは嫌だ”と俺に訴えかけたAに話したことを、こいつは忘れてしまっていそうだ。
いい。お前が忘れてしまうなら、何度でも言う。
お前が安心するまで、それを無意識に受け取ってくれるようになるまで、何度も何度も。
『わたしの存在ってなんなんやろ』
胸を裂くようなその問いに、俺は。
「A、──── お前の存在は、俺の全て」
お前が傷つくなら、俺も傷つく。
俺の声、身体の全部をくれてやっていいと思う代わりに
流れる血の全てがAを渇望している。
その事を“愛してる”以外の言葉で伝えるには、これしかなくて。ひっくひっくと泣きながら息をするAが身じろいで、「どうして」とまた呟く。
「そこまで強く、想ってくれるの?」
抱き込んだ顔を上げさせて、潤んだ瞳を合わせる。
そういやリュウヘイに『不細工と思ったことはない』とか言ったけど、あれは撤回。ぐしゃぐしゃの泣き顔は中々のもん。
ただそれさえも全部、全部だ。
「無償の愛ってやつに理由があんのか?」
生まれたときからAを愛してた。
それは友愛で、家族愛で、
そして俺にとってのただ1人の女の子として。
俺の疑問にAが「ふっ」と息を吐く。
それは小さな笑いか、ただ溜め込んでいたものを吐き出しただけか。
今度はAがギュッと腕に力を込めて、俺にしがみついてくる。
「わかんない」
「なにが」
「無償の愛がなんなのか。舜斗の頭ん中も」
「ふうん。俺も」
「なにそれ」
「みづ」
「ん?」
「他の人が持つ "当たり前" を作ってはやれない」
「……わかってるよ」
「ただ、それでも良かったっていつか思えるくらいに」
「…………」
「俺が一生みづの側にいるよ」
大して力もないし、お前より馬鹿だし
すぐに理性飛ばしそうになる情けない俺で
ちゃんと守ってやれない不甲斐なさは、きっとこの先も何度も感じるんだろう。
それでも繰り返しAと喧嘩したり、少し泣かしたりしながら、最後にお前が笑っていられるように。
少しずつ人として、強くなって。
お前がこの先幾たびの あらしのよる を超えるとき、
そこに寄り添っていられるのは一生俺がいい。
.
匿名感想
184人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
befirst(プロフ) - あらしのよるに大好きすぎてなんっっかいも読み返しています!! (11月27日 20時) (レス) id: 73aa1688da (このIDを非表示/違反報告)
白(プロフ) - masayo_8さん» 書き手の私、超無意識に寿司桶空っぽにしておりました!たしかに、変わらず食欲旺盛で可愛い笑 おばあちゃんもおばさんも、きっとママから旦那がどんな人なのかは聞いていなかったんですよね…まさに神(読み手)のみぞ知る事実なのです、悔しいことに。 (5月17日 22時) (レス) id: 2167f4606f (このIDを非表示/違反報告)
masayo_8(プロフ) - なかなかの内容なのに、きっちり寿司桶を空っぽにするモンさんを、愛してやまないっ(◕દ◕)そういえば、おばあちゃんも、おばさんも、生きてるとは言ってなかったなぁと、解説を見て思いました!天才っ!! (5月17日 15時) (レス) @page50 id: be11c96dd8 (このIDを非表示/違反報告)
白(プロフ) - まおさん» まおさんありがとうございます♡登場人物の気持ちが大きくなればなるほど、描写を書いては消して……この人こんなこと言わんよな、もっとらしい言葉はないかなと考えながら書いているので、そう言ってもらえて嬉しいです。 (5月16日 11時) (レス) id: 2167f4606f (このIDを非表示/違反報告)
白(プロフ) - とんトンさん» ネタバレ私は大歓迎ですよー♡笑 わー、見てくれてるって嬉しくなりますしね!リルアワとのリンクも楽しんでいただければ! (5月16日 11時) (レス) id: 2167f4606f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:白 | 作成日時:2023年4月7日 23時