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予定の時間までまだ少しあるし、テーブルに筆記用具を広げてノートを開く。
目の前に座ったレオくんが、「おっ 勉強する?」と聞いてくる。
「ちょっとだけ。いい?」
「俺たち邪魔?」
「ううん。全然話しててくれていいよ。集中できる」
「おーさすが」
隣に座って頬杖を付いてたジュノンくんが、ニヤッと笑う。そこまで興味も無いだろうに、ノートをマジマジと覗き込んできた。
「……あかんその距離は流石に気が散るし」
「ふっ」
軽く笑って、ジュノンくんの指先が テーブルに置かれたペンケースに付けてたお守りをつつく。
「付けてんだ」
「……うん」
「なんか、ミヅキ、俺の家族に気に入られてる」
「、そっか」
「なんでだろうね」
「知らないよー。……けど嬉しい」
言った言葉は嘘じゃない。
ジュノンくんのご両親も妹さんもみんな良い人で、良い人に“気に入られる”のは自分が肯定されているようで嬉しい。
マナトくんがこっそりこちらに視線を投げた気がしたけど、気にしないふりで参考書に目を走らせる。
出来るならこの会話が続かなければいいな、とか
わずかに思う願いは届かないと相場が決まってるわけで。
「親父さんの誕生日に行ったんだっけ?池亀家のパーティどうだった?」
「……すごかったよ、料理美味しくて、ジュノンくんのパパさんご機嫌でギター弾いてくれた」
「うわーおしゃれ〜」
「はっ、イメージ通りだろ」
飯うまいのも親父がうた歌うのも。ってジュノンくんは少しドヤ顔。それにレオくんはわざとらしく顔を顰めた。
「ほらほら、勉強の邪魔しないの」
不意にモモヨさんが助け舟を出してくれた。
会話の内容で、私の心中を察したのだろう。だが残念ながら こういう時に察しが悪いのがレオくんだったりする。
声のトーンを下げながらコソッと
「俺もミヅキに合格祝いのお守り買ってこようかな〜」
って呟いた。
それにはジュノンくんが片眉を上げて「親かよ」と瞬時に突っ込む。
私とマナトくんとモモヨさんの間に生まれる微妙な空気。
つい、走らせていたペンが止まって、次に続く言葉を待ってしまった。
それがいけなかったのかな。
「ミヅキは家族みたいなもんだしねっ!ねっ?」
やたらと響いたように感じる無邪気な声。
レオくんの言葉には100%悪意が無いと分かっているからこそ、行き場のない痛みが走る。
彼の悪気ないセリフに、こんなに心を締め付けられるなんて思ってもなかった。
「っ、」
バカだなぁ私ちゃんと、割り切れる頭だったら。
不用意に彼を戸惑わせることも無いのに。
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befirst(プロフ) - あらしのよるに大好きすぎてなんっっかいも読み返しています!! (11月27日 20時) (レス) id: 73aa1688da (このIDを非表示/違反報告)
白(プロフ) - masayo_8さん» 書き手の私、超無意識に寿司桶空っぽにしておりました!たしかに、変わらず食欲旺盛で可愛い笑 おばあちゃんもおばさんも、きっとママから旦那がどんな人なのかは聞いていなかったんですよね…まさに神(読み手)のみぞ知る事実なのです、悔しいことに。 (5月17日 22時) (レス) id: 2167f4606f (このIDを非表示/違反報告)
masayo_8(プロフ) - なかなかの内容なのに、きっちり寿司桶を空っぽにするモンさんを、愛してやまないっ(◕દ◕)そういえば、おばあちゃんも、おばさんも、生きてるとは言ってなかったなぁと、解説を見て思いました!天才っ!! (5月17日 15時) (レス) @page50 id: be11c96dd8 (このIDを非表示/違反報告)
白(プロフ) - まおさん» まおさんありがとうございます♡登場人物の気持ちが大きくなればなるほど、描写を書いては消して……この人こんなこと言わんよな、もっとらしい言葉はないかなと考えながら書いているので、そう言ってもらえて嬉しいです。 (5月16日 11時) (レス) id: 2167f4606f (このIDを非表示/違反報告)
白(プロフ) - とんトンさん» ネタバレ私は大歓迎ですよー♡笑 わー、見てくれてるって嬉しくなりますしね!リルアワとのリンクも楽しんでいただければ! (5月16日 11時) (レス) id: 2167f4606f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:白 | 作成日時:2023年4月7日 23時