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「ミヅキから聞きたいことはあるかい?」
相変わらず日高さんに気を使ってもらいながら、当たり障りのないような会話を続けて10分程度。
ふとそんな風に聞かれて、ずっと思ってた事を口にする時が来たのだと感じた。
「……どうして、今になって連絡して来られたんですか?」
なるべく刺々しくならないように、純粋な疑問ですと言いたげな声色で訊ねる。
興味も何もない人だけど
その理由は この人の口から聞きたい。
相変わらず猫背の彼は、懐に手を伸ばして何かを探る様子を見せた後、思い直したようにまた居住まいを直した。
「……嫁と息子が、」
一瞬、頭の中をヒヤリとした感覚が過ぎる。
今この人、嫁と息子って、言った……?
隣の気配が ぐっと前のめりになるのを感じた。
「Aのオーディションを見ていたんだ。名前を見てすぐに気が付いたよ、……ただ、初めのうちは連絡するつもりは無かった」
「…………なら、なんで」
「2人が特にキミを気に入ってね、よく話に出てくるんだよ。……話を聞いているうちに、テレビに映るその子が息子の姉に当たる人だと、知らぬふりをする事に耐えられなくなってしまった」
「「「…………」」」
絶句する空気が部屋に漂うのを感じる。
ああきっと、この人が謝った気持ちって、結局は私のためじゃ無くて自分のためなんだろう。
興味なんてないはずなのに
私への気持ちが全く感じられない事に、少し堪えてしまった。
ふっと視線が下を向く。
もう終わりにしたいな……。
なんて言うべきか迷う私より、先に口を開いたのは日高さんだった。
「野替さん。ご家族がいらっしゃるなんて、お伺いしていませんでしたね?」
「あ、ああ。ええ。あえて言うことでも無いのかと思いまして」
「僕は少なくとも今日貴方は、ミヅキの父親としてここにいらっしゃると思っていましたよ」
「はい、もちろん」
「ミヅキはただでさえ突然の事に戸惑っています。前触れもなく自分に弟が、……貴方に別の家族がいると知らされる気持ちは汲めませんでしたか?」
静かな怒気が含まれている気がして、思わず日高さんを見る。わずかに寄った眉間の皺が、明確に彼の気持ちを表していた。
「ミヅキが貴方をどう思うか以前に 先ほどから野替さんの意識がどうも彼女を慮っていなそうで、俺は正直今若干、愕然としています」
ハッキリとした物言いに驚いたのが正直なところ。
日高さんのこういう顔を、私はあまり見た事がない。
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befirst(プロフ) - あらしのよるに大好きすぎてなんっっかいも読み返しています!! (11月27日 20時) (レス) id: 73aa1688da (このIDを非表示/違反報告)
白(プロフ) - masayo_8さん» 書き手の私、超無意識に寿司桶空っぽにしておりました!たしかに、変わらず食欲旺盛で可愛い笑 おばあちゃんもおばさんも、きっとママから旦那がどんな人なのかは聞いていなかったんですよね…まさに神(読み手)のみぞ知る事実なのです、悔しいことに。 (5月17日 22時) (レス) id: 2167f4606f (このIDを非表示/違反報告)
masayo_8(プロフ) - なかなかの内容なのに、きっちり寿司桶を空っぽにするモンさんを、愛してやまないっ(◕દ◕)そういえば、おばあちゃんも、おばさんも、生きてるとは言ってなかったなぁと、解説を見て思いました!天才っ!! (5月17日 15時) (レス) @page50 id: be11c96dd8 (このIDを非表示/違反報告)
白(プロフ) - まおさん» まおさんありがとうございます♡登場人物の気持ちが大きくなればなるほど、描写を書いては消して……この人こんなこと言わんよな、もっとらしい言葉はないかなと考えながら書いているので、そう言ってもらえて嬉しいです。 (5月16日 11時) (レス) id: 2167f4606f (このIDを非表示/違反報告)
白(プロフ) - とんトンさん» ネタバレ私は大歓迎ですよー♡笑 わー、見てくれてるって嬉しくなりますしね!リルアワとのリンクも楽しんでいただければ! (5月16日 11時) (レス) id: 2167f4606f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:白 | 作成日時:2023年4月7日 23時