ミュージックアワー2【BE:FIRST】

14-1 相入れない対面 ページ26

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(こんなに小さな人だったんだなぁ)




と、目の前に肩を縮こませるようにして座る人を見て思う。普段周りにいる男性が軒並み大きいから、余計そう感じるのかもしれない。

モモヨさんに連れられて来たこの人に、日高さんに習うよう会釈をして数分。

「野替です。はじめまして、君の父親です」と告げられた衝撃発言以外、ほとんど頭に入ることなく 彼と日高さんの会話をボーッと聞き流している。




(“君の父親です”って、普通に生きてて言うことホンマに無くない？言われることも無いやんな。思った以上に 話の切り出し方が下手すぎん？唐突すぎんねん。私みたいやん。

……まって、遺伝しとる)




「どうかな、知ってる？」

「あ、はい」

「………」

「……ん？」




日高さんに話を振られて適当に相槌を打った。
すると私に集まる3人の視線。ハッとして目線を上げたら、目の前の人と目が合った。……ほんの少し居心地が悪い。




「野替さん今東京にお住まいみたいだよ、福生って、知ってる？」

「いえ、存じ上げません」

「……そっか。そうだよな、Aはずっと名古屋だったもんな」

「今は大阪にいます」

「あ、ああ……そうか。うん。そうだった」




何だろう、この時間は。
居心地悪そうなのはこの人もそうだ。

こちらが続ける気が無いせいで中々弾まない会話。困ったような日高さんの空気が申し訳ない。でも、だって……




(やっぱり、全然、実感わかない)




じっくり考えてみても、実際に会って声を聞いても
この人が私の父親だなんて不思議な気分だ。

白髪混じりの髪の毛、色白の手。
スーツ姿は日高さんと違ってどこか野暮ったい。
私はこの人とどこが似てるんだろう。叔母さんに言われた通り考えてみたけれど、どうにもあまり見つからない。

ただ、彼が“A”と勝手知ったるように私の名前を呼んだ瞬間、確かに感じたこれは。




「……本当に申し訳なかった」

「…………、」

「Aは母さんからどう聞いているか分からないが……あの頃の私には本当に余裕がなくて、君たちのそばに居ても傷付ける事しか出来なかったんだ。


　置いていくような真似をして、申し訳なかった…」




何故ママがこの人と別れることになったのかは知らない。何があったのかなんて、聞いたことも無かった。

ここまで匂わされても、興味が湧かないどころか




(ああ、そっか)




胸の奥に燻る苦い感覚。

私はきっとこの人に興味がないのだ。
いくら自分を知らせようとしてきても、受け入れられる気がしない。



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