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小論文に向かう私の隣でテーブルを出して駅弁の袋を置いた舜斗は、そこから袋に手をつけずに私の方を見ている。
「ん?」
「………いや。いい。いつも通りでヨシ」
「はい?」
意味わかんない言動の舜斗に、ん?ん?と首を左右に傾げたら、「集中しろ」とほっぺを摘まれて前を向くように力を込めてきた。
(いつも通りでヨシ、ってなんなん)
変だな、舜斗。
この1週間で変なモノでも爆食いした?
そういえば、駅弁はなにを買ったんだろう。と舜斗の手元を覗き込む。
「…………え゙っ!ひつまぶし?!」
「うん。食べたくて」
「待って何で1人で食べてるん?私のは?!」
「ねーよ」
「あるよ!」
「はっ?っ、ねーよ!離せ!離しなさい!みづコラ!」
「ゔーーっ!」
「威嚇すんなよ……っ」
ずるいずるいっ、とテーブルにあった器を両手で包み込んで自分の方へ引き寄せようとすれば、舜斗が物凄い力でそれを阻止する。
いいな、ひつまぶし。
8月中旬に、日高さんと名古屋に来て食べたそれは久しぶりで、やっぱり名古屋の鰻も出汁も格別に美味しかった。
「わかった、一口な、一口!」
「…………あっ!」
「顎外れるぞお前」
大きく口を開けた私に舜斗は呆れ顔。
名古屋に着くまでの間に、串カツ弁当を食べたことは内緒にしておこうかな。
*
「おはよう」
「おはよー」
お手洗いから出てきたところの自動販売機で、マナトくんがお水を買っていた。後ろから声をかければ、ふわりと振り返る。
オーバーサイズのダルダルの練習着。髪の毛もセットしてなくてサラッサラの直毛が可愛い。……年上の男性に可愛いとか言ったら、いやかな。
「……ん?ミヅキも買う?」
「あ、ううん。……ね、この前はありがとう。マナトくんに話したら気持ち楽になったよ」
「、今週末って言ってたね」
日曜の夜のことを思い出して、そういえば泣いちゃったななんて気恥ずかしさもありつつ。マナトくんに向かって 口角を上げて頷く。
「明日、旧オフィスでって話になってる」
「そっか。……旧オフィス最後の仕事だ?」
「ははっ、そうかも」
気遣う言葉が一切ないのは、逆に気楽でありがたい。
マナトくんに吐き出したのが効いたのか、いよいよ明日に迫った対面を前に、頭の中は妙にスッキリとしている。
そういえば行きの新幹線で舜斗の家族の話をしたけど、先週末に感じてたモヤモヤは不思議なくらい無かったなぁ。
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befirst(プロフ) - あらしのよるに大好きすぎてなんっっかいも読み返しています!! (11月27日 20時) (レス) id: 73aa1688da (このIDを非表示/違反報告)
白(プロフ) - masayo_8さん» 書き手の私、超無意識に寿司桶空っぽにしておりました!たしかに、変わらず食欲旺盛で可愛い笑 おばあちゃんもおばさんも、きっとママから旦那がどんな人なのかは聞いていなかったんですよね…まさに神(読み手)のみぞ知る事実なのです、悔しいことに。 (5月17日 22時) (レス) id: 2167f4606f (このIDを非表示/違反報告)
masayo_8(プロフ) - なかなかの内容なのに、きっちり寿司桶を空っぽにするモンさんを、愛してやまないっ(◕દ◕)そういえば、おばあちゃんも、おばさんも、生きてるとは言ってなかったなぁと、解説を見て思いました!天才っ!! (5月17日 15時) (レス) @page50 id: be11c96dd8 (このIDを非表示/違反報告)
白(プロフ) - まおさん» まおさんありがとうございます♡登場人物の気持ちが大きくなればなるほど、描写を書いては消して……この人こんなこと言わんよな、もっとらしい言葉はないかなと考えながら書いているので、そう言ってもらえて嬉しいです。 (5月16日 11時) (レス) id: 2167f4606f (このIDを非表示/違反報告)
白(プロフ) - とんトンさん» ネタバレ私は大歓迎ですよー♡笑 わー、見てくれてるって嬉しくなりますしね!リルアワとのリンクも楽しんでいただければ! (5月16日 11時) (レス) id: 2167f4606f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:白 | 作成日時:2023年4月7日 23時