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普通であれたら良いのにという気持ちは消えない。
父親に会う意味を探してしまって、なにも思い浮かばない自分に嫌気がさす事も。
マナトくんは本当にその解決策を提示しないまま
見えないものに向かう私の心を少し、軽くしてくれた。
「鉄板ネタ?」
「超絶とっておきのモノマネ」
「ふ、ふーん」
「あっ、ちょっと気になったでしょ」
エントランスに進む階段の下らから見上げてきた、何かを企むみたいに笑う顔。
いつもと何も変わらなくて、素直に 好きだなぁと思う。
「笑えるかなそれ、シュールすぎんのよなぁ」
「雅楽わい」
「あれはめっちゃおもろかった」
「おもろかったんかい」
「ふふっ…………ありがとうね」
いろんな意味を込めて、言えばマナトくんは うんと頷いた。
「おやすみ、ミヅキ」
心の中を初めてメンバーに打ち明けたその日
最後に聞いたのは、夜に溶けてなくなるような。
甘くて透明な彼の声。
*
「おつ。お前それ酔わないの?」
「おつかれー。新幹線は何故か平気なの。ありがたい事に」
翌週金曜日の午後。
東京に向かう新幹線グリーン席で、目深にキャップを被った舜斗がボストンバッグを足元に放ってきた。
どうやら、気がついたら名古屋駅。
小論文に夢中で新幹線が停まっている事にも気が付かなかった。
「…………なに持ってきたん?」
「96ブラハウスには娯楽がねーんだよ」
「んー?うん」
「だから、とーちゃんのSwitchパクってきた」
「……舜斗のとーちゃん可哀想……」
自分のゲーム機を息子にパクられて、東京に持って行かれるなんてそんなことある?一度持ち出されたら安易に取り返せないところもまた、気の毒だ。
「買ったらええやん、自分の」
「持ってるけど弟が使うから東京に持ってこれねぇ」
「……なんかそれ、家の中でもうちょい上手いことしたら、自分の持って来れたんじゃない?」
「おう」
舜斗の弟は相変わらずゲームに夢中みたい。
舜斗パパもたしか、結構漫画とかゲームが好きで、久保家の長男は舜斗っていうよりもパパさんっぽかったなって。
「ファンミで会えるの楽しみだなー」
「……別にもっと早くきてもいいんだけど」
「タイミング無いんよ」
次に名古屋に来たら会おうね!と、舜斗の妹と電話で約束した8月の頃。もう5年も会ってないのだ、記憶の中にいる久保ファミリーからどれほど変化があるのか、少しビビりつつも楽しみ。
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befirst(プロフ) - あらしのよるに大好きすぎてなんっっかいも読み返しています!! (11月27日 20時) (レス) id: 73aa1688da (このIDを非表示/違反報告)
白(プロフ) - masayo_8さん» 書き手の私、超無意識に寿司桶空っぽにしておりました!たしかに、変わらず食欲旺盛で可愛い笑 おばあちゃんもおばさんも、きっとママから旦那がどんな人なのかは聞いていなかったんですよね…まさに神(読み手)のみぞ知る事実なのです、悔しいことに。 (5月17日 22時) (レス) id: 2167f4606f (このIDを非表示/違反報告)
masayo_8(プロフ) - なかなかの内容なのに、きっちり寿司桶を空っぽにするモンさんを、愛してやまないっ(◕દ◕)そういえば、おばあちゃんも、おばさんも、生きてるとは言ってなかったなぁと、解説を見て思いました!天才っ!! (5月17日 15時) (レス) @page50 id: be11c96dd8 (このIDを非表示/違反報告)
白(プロフ) - まおさん» まおさんありがとうございます♡登場人物の気持ちが大きくなればなるほど、描写を書いては消して……この人こんなこと言わんよな、もっとらしい言葉はないかなと考えながら書いているので、そう言ってもらえて嬉しいです。 (5月16日 11時) (レス) id: 2167f4606f (このIDを非表示/違反報告)
白(プロフ) - とんトンさん» ネタバレ私は大歓迎ですよー♡笑 わー、見てくれてるって嬉しくなりますしね!リルアワとのリンクも楽しんでいただければ! (5月16日 11時) (レス) id: 2167f4606f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:白 | 作成日時:2023年4月7日 23時