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「仲間としてね」と、流れるように付け加えられた台詞。渡された言葉は柔らかくて温かくて、涙はもう片方の目からも溢れ出てきた。
「ははっ、泣くなー」
「む、むり……っ、もうむり……!」
「無理なの?」
「泣きたいわけじゃなかったのに……!」
「泣いちゃったねぇ」
「い、、いじわるっ!手、離して」
言ったら直ぐに離れる手。
自分で拭おうとした涙を、マナトくんの親指の腹が撫でるように拭き取る。
「泣かないでよミヅキ、可愛いから」
「はっ?!ねー、もうっ!」
「っ、くくっ」
「まじめに、話聞いてくれるんじゃ、無かったの!」
「聞いてたよ」
「私が泣いたらもっとビビってよ!」
人の泣き顔見て“可愛い”って、私が意地悪と言ったこと、あながち間違いじゃないな。
せっかく、マナトくん、良いこと言ったのに。
本筋とはちょっとズレてるけど、でも、ぜんぶ一瞬忘れるくらい嬉しい……、
「…………っ、」
「えっ、もっと泣く?止まらねーのね?」
「……!いきなり好きって、嬉しいけど、ちょっとびっくりする……」
「、ははっ、そっか。」
一瞬、茶化すように笑うマナトくんの顔が苦しそうに見えたのは、どうか勘違いであって欲しい。
その好きは……その、“好き”はさ。
“仲間としてね”
拙い経験値でも、この雰囲気を知ってる気がする。
(応えられない)とか思ってること自体失礼なのかもしれない。……でも失礼でも良い。
どうか絶対、マナトくんの言葉の通りであって。
「さ、家入りな」
「……ん、」
一通り涙を拭いたその手の流れで、頭をポンポン撫でた後、肩に手を置いてマンションのエントランスへと促す。
マナトくんに操られるように、家へと向かう足。
泣いた手前このままさよならするのが ちょっと気まずい。
「……どしたー?もうちょい一緒にいて欲しい?」
「うんって言ったらどうするん」
「ショウタくん召喚して96ブラハウスで2次会かな」
「よくない。」
「ははっ」
笑うマナトくんに背中を押され、エントランスの階段を上がり、オートロックの解除キーを押す。“送ってくれてありがとう”を言おうと振り返った私に、先に口を開いたのはマナトくんの方。
「ミヅキ、お父さんと会うときさ」
「……うん?」
「……会ってみて、なんか少しでも苦しくなったりしたら
その足で俺のところにおいで」
今度は泣かせないで笑わせるネタ仕込んでおく。って、スエットの腰の辺りを掴んで言う。
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befirst(プロフ) - あらしのよるに大好きすぎてなんっっかいも読み返しています!! (11月27日 20時) (レス) id: 73aa1688da (このIDを非表示/違反報告)
白(プロフ) - masayo_8さん» 書き手の私、超無意識に寿司桶空っぽにしておりました!たしかに、変わらず食欲旺盛で可愛い笑 おばあちゃんもおばさんも、きっとママから旦那がどんな人なのかは聞いていなかったんですよね…まさに神(読み手)のみぞ知る事実なのです、悔しいことに。 (5月17日 22時) (レス) id: 2167f4606f (このIDを非表示/違反報告)
masayo_8(プロフ) - なかなかの内容なのに、きっちり寿司桶を空っぽにするモンさんを、愛してやまないっ(◕દ◕)そういえば、おばあちゃんも、おばさんも、生きてるとは言ってなかったなぁと、解説を見て思いました!天才っ!! (5月17日 15時) (レス) @page50 id: be11c96dd8 (このIDを非表示/違反報告)
白(プロフ) - まおさん» まおさんありがとうございます♡登場人物の気持ちが大きくなればなるほど、描写を書いては消して……この人こんなこと言わんよな、もっとらしい言葉はないかなと考えながら書いているので、そう言ってもらえて嬉しいです。 (5月16日 11時) (レス) id: 2167f4606f (このIDを非表示/違反報告)
白(プロフ) - とんトンさん» ネタバレ私は大歓迎ですよー♡笑 わー、見てくれてるって嬉しくなりますしね!リルアワとのリンクも楽しんでいただければ! (5月16日 11時) (レス) id: 2167f4606f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:白 | 作成日時:2023年4月7日 23時