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「── 言葉にするのも 形にするのも
そのどれもが覚束なくって
ただ目を見つめた するとあなたは
ふっと優しく笑ったんだ」
「「 嗄れた心も さざめく秘密も
気がつけば 粉々になって
刹那の合間に
痛みに似た 恋が体を走ったんだ 」」
声を合わせれば、ミヅキが顔だけ振り返ってふっと笑う。
俺の気持ちもこの歌みたいに 刹那の痛みを過ぎれば、いつか消えるものだと思えるんだろうか。
(いや、違うか)
この曲ってミヅキが言うような、“刹那的な恋の歌”とは違う気がする。
むしろ、一瞬の衝撃をずっと忘れられずに、心の中に甘い痛みを抱え続けているような、苦しみの歌に聞こえてしまう。
(俺がそうだからなのかな……)
手を伸ばせば触れる距離にあるうなじを撫でて、赤くなるミヅキが俺を意識して、BE:FIRSTとか、シュントとか、これからの事を一旦全部どっかにやって
強引なまでにミヅキの気持ちを手に入れたい。
それでずっとずっと痛い、この心臓が少しでも安らかになるのなら。
「……、」
伸ばした手を、ピタリと止めた。
前方から明るい光が差し込んでふと目を細める。
反射でミヅキの肩を抱いて、大股で歩道へと上がった。
「…………危ないからやっぱ、歩道歩こう」
「うん。ありがと」
時速50kmで俺たちの横を過ぎていった車を見送って、また目的地へと歩き出す。
ああ俺って本当に馬鹿だな。
「いい息抜きできた気がする」
「そう?……ショウタくんもいたしね」
「うんっ、やっぱショウタくん最高」
「ははっ。そーちんが嫉妬するよ」
「えー大丈夫だよ。ソウタくんからショウタくん取るとかないし」
「違う違う」
ショウタくんにミヅキが取られることを嫌がるんだよ。……って、そっくりそのまま俺自身のことなのに、相方の名前を出すなんて せこ過ぎか。
「違うの?」
「ショウタくんはミヅキの扱いが上手いから、俺らはシンプルに嫉妬するかな」
「し、シンプルに嫉妬、とは?」
「……深掘りされると恥ずいんだけど」
「言い始めたのはそっちやん」
くすくすと、ミヅキが肩を振るわせた。
恥ずかしいと伝えるとそれ以上は追求せずに、ショウタくんの手のひらの上なんかなぁ、私。って、左手のひらを上にして 見えない玉を転がすようなジェスチャーをする。
「転がされてるっていうよりは、ショウタくんって存在自体に安心してるんじゃない?」
「……ほー、」
俺達と一緒にいるミヅキが気を張ってると言うわけじゃないけど。ここ最近見なかった解放された空気が、今日のミヅキからは滲み出ていた。
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befirst(プロフ) - あらしのよるに大好きすぎてなんっっかいも読み返しています!! (11月27日 20時) (レス) id: 73aa1688da (このIDを非表示/違反報告)
白(プロフ) - masayo_8さん» 書き手の私、超無意識に寿司桶空っぽにしておりました!たしかに、変わらず食欲旺盛で可愛い笑 おばあちゃんもおばさんも、きっとママから旦那がどんな人なのかは聞いていなかったんですよね…まさに神(読み手)のみぞ知る事実なのです、悔しいことに。 (5月17日 22時) (レス) id: 2167f4606f (このIDを非表示/違反報告)
masayo_8(プロフ) - なかなかの内容なのに、きっちり寿司桶を空っぽにするモンさんを、愛してやまないっ(◕દ◕)そういえば、おばあちゃんも、おばさんも、生きてるとは言ってなかったなぁと、解説を見て思いました!天才っ!! (5月17日 15時) (レス) @page50 id: be11c96dd8 (このIDを非表示/違反報告)
白(プロフ) - まおさん» まおさんありがとうございます♡登場人物の気持ちが大きくなればなるほど、描写を書いては消して……この人こんなこと言わんよな、もっとらしい言葉はないかなと考えながら書いているので、そう言ってもらえて嬉しいです。 (5月16日 11時) (レス) id: 2167f4606f (このIDを非表示/違反報告)
白(プロフ) - とんトンさん» ネタバレ私は大歓迎ですよー♡笑 わー、見てくれてるって嬉しくなりますしね!リルアワとのリンクも楽しんでいただければ! (5月16日 11時) (レス) id: 2167f4606f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:白 | 作成日時:2023年4月7日 23時