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もう、有無を言わさずにタクシーを呼んでしまおうか。
そしたら多分、丁度いいからとショウタくんも一緒に帰るだろうし。
ソウタくんは……まあ潰れることなんて良くあるから、放っといたら明日適当な時間に起きるかな。
「つーわけだから、マナト送ってきてやってよ」
「えっ、いらんって!」
「…………俺、家主だよね?」
「おじさんちょっと今から往復1時間はしんどい」
「送ってってそのまま帰るとかは?」
「それこそタクシーで帰りたい」
「……」
ちょっと、ショウタくんまでいきなり何。
そんなの言うなら、ショウタくんがタクシー呼んでよ。
黙って数秒見つめ合う俺とショウタくん。この間も何なんだよ……「ほんまに良いよ、1人で帰れる!」というミヅキの声にハッとして、また少しため息が漏れた。
「よし行くかぁ」
「ねー、ほんまに良いってば……」
「流石にねぇ、この時間に未成年の女の子1人で外歩かせる訳ないのよ?」
「俺に送られるか、タクシーで帰るかの2択だよ。ほら、帰るならStand up」
笑顔を貼り付けたまま、中腰になってミヅキの手を取る。そしたら渋々と言った感じで 彼女は腰を上げた。
何でだろうなぁ、わがまま言ってんのはどう考えてもミヅキの方なのに、その“やれやれ”みたいな顔は。
「歩くの好き?」
「うん。音楽聴きながら、RunもWalkもすき」
虫も寝静まる真夜中の道。
ミヅキはふらふらっと車道に出て、鼻歌を歌いながら白線の上を歩いている。危ないから普通にやめて欲しい。
「ほら、車来たら危ないよ?」
「マナトくんもこっちおいでよ」
「……行かなーい」
「ふーん。」
残念なのかよく分かんない“ふーん”で、ミヅキは俺を振り返る事もなくまだ白線の上を行く。
そのうち視線は空を見上げて、彼女の口からハッキリとした歌詞が聞こえてくるようになった。
「──── 現れたそれは 春の真っ只中
えも言われぬまま 輝いていた
どんな言葉も どんな手振りも
足りやしないみたいだ」
その歌が何かを知った瞬間に、俺の身体は引き寄せられるように車道に出る。
「……結局来るやん」
「ふっ、ねぇ、その歌」
「知ってる?春雷」
「どんな曲か分かってるの?」
「えー、雷みたいな、刹那的な恋の歌?」
俺の前を歩くミヅキの頬に、秋風が撫でるように通り過ぎる。揺れながら踊るその髪の黒は、まさに 他のどれより
俺の気持ちが本当はとっくにバレていて、
こいつは茶化すようにこの曲を歌ったんじゃないかって、そんなあり得ない焦りが心をざわつかせた。
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befirst(プロフ) - あらしのよるに大好きすぎてなんっっかいも読み返しています!! (11月27日 20時) (レス) id: 73aa1688da (このIDを非表示/違反報告)
白(プロフ) - masayo_8さん» 書き手の私、超無意識に寿司桶空っぽにしておりました!たしかに、変わらず食欲旺盛で可愛い笑 おばあちゃんもおばさんも、きっとママから旦那がどんな人なのかは聞いていなかったんですよね…まさに神(読み手)のみぞ知る事実なのです、悔しいことに。 (5月17日 22時) (レス) id: 2167f4606f (このIDを非表示/違反報告)
masayo_8(プロフ) - なかなかの内容なのに、きっちり寿司桶を空っぽにするモンさんを、愛してやまないっ(◕દ◕)そういえば、おばあちゃんも、おばさんも、生きてるとは言ってなかったなぁと、解説を見て思いました!天才っ!! (5月17日 15時) (レス) @page50 id: be11c96dd8 (このIDを非表示/違反報告)
白(プロフ) - まおさん» まおさんありがとうございます♡登場人物の気持ちが大きくなればなるほど、描写を書いては消して……この人こんなこと言わんよな、もっとらしい言葉はないかなと考えながら書いているので、そう言ってもらえて嬉しいです。 (5月16日 11時) (レス) id: 2167f4606f (このIDを非表示/違反報告)
白(プロフ) - とんトンさん» ネタバレ私は大歓迎ですよー♡笑 わー、見てくれてるって嬉しくなりますしね!リルアワとのリンクも楽しんでいただければ! (5月16日 11時) (レス) id: 2167f4606f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:白 | 作成日時:2023年4月7日 23時