草原 ページ1
はて、ここはどこだろう。
私がいたところか、いや、それはない。
私たちが住んでいる地球は、戦争で草原などはとうの昔に消えたはずだ。
おかげで一般人は木星に逃げている。
私たち、戦闘している者だけが地球に残っているはずだ。
にしても、今宵も戦争に勝ったから部下たちと呑んでいたはずだったが。
今自分は草原に突っ立っている。
なんにもない、あたり一面草原の真ん中に。
草とやらを触ってみた。
青々して水々して、そして何より生きている。
景色に色がある。
それだけで、自然と笑みが浮かぶ。
『......なんて素晴らしいところなの』
ちらほらと、昆虫と呼ばれるものも飛び跳ね、絶滅したはずの蟻もいた。
蝶の刺繍がしてある深紅のチャイナドレスがさらに赤く見える。
そして何より、月が綺麗なのだ。
空気も澄んでいて、ウイルスや放射能が充満していない。
ここの場所がどこか気にはなるが、この景色がとても綺麗でそんなことを忘れさせられる。
黒い衣に赤い雲模様のマントを脱ぎ地面に敷き、寝っ転がってみた。
『綺麗......』
もういっそ、ここで生命尽きたい。
あんな煙まみれで命尽きるよりはここで尽きた方がきっと......
「見よ、女子がおるぞ」
「はい、珍しい格好をしておられます」
『......？』
寝っ転がっていた隣におじいさんが座った。
「...そちは、何を見ておるのだ？月か？」
『...全てです。月もですか、この草原も、空気も、全てがキレイで感動しています』
ひとつ、深呼吸をした。
どこまでも澄んでいるその空気を。
「...感動と言ったな？何故、そこまで感動する」
『私が住んでいるところは、草原どころか、草木がありません。月も人間の欲のため破壊され、空気はとても吸えるものではなかったんです』
「おかしなことをいうムスメだ、あり得ん」
『...きっと、こんなにも綺麗なのはこの世を治める人が素晴らしく民からも慕われている証拠なんでしょうね』
「...まこと、そう思うか？」
お爺さんは、隣に寝っ転がった。
もう１人のおじさんが、静止の声をかけるがお爺さんは片手を上げた。
『そう思います、私もそのような人の為に命を捧げ忠義を尽くしたかったです......』
あんな、欲にまみれた人間の皮を被った政治家の為じゃなくて...
「なぜ、ここに立っておったのだ？」
『わかりません、気付いたらここに立っていました。けれど、きっとこれも夢なんでしょうね』
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作者名：黒澤 怜 | 作成日時：2016年12月9日 23時
