炭治郎、元妹に会う【鬼滅の刃】

泣きながら　4/5修正 ページ10

『なんで、そんなに優しいの？…』


刀を持つために力んでいた両手がぶらんと左右に垂れた。

カタ、と力なく刀が落ちて私も畳の上に両膝をつく。


「…A、ちゃん？」


善逸が私の背にぎこちなく手を置いた。

ゆっくり、優しい手でさすってくれる。

炭治郎と伊之助は動けていない。


『っぐぅ…』


思わず顔を手で覆う。

嗤ってしまう。

所詮、仲良しごっこなんだ。


「むぅ…？」


頬に手が置かれた。

禰豆子の温かい手。

炭治郎は気がついているのだろうか？

私の嘘泣きに。


「禰豆子、手を離せ！！」

『…ばっかみたい。』

「禰豆子ちゃんだめだ！！」


言葉を発すると共に、禰豆子に馬乗りになる。

禰豆子は今、昼間の伊之助ように無抵抗だ。

首に当てた刃を横にゆっくりと滑らせ始める。

まだ私は迷っているらしい。


「むぅゔ！！！」


脂汗が浮き、苦しそうに呻く禰豆子。

瞳孔が猫のようになっていくのが見えた。

やはり鬼は鬼。

口につけられた枷が外れる。

肉食獣のような牙。


飢餓に陥った鬼と変わらない。

もう、殺す対象としか見れない。


『呼吸を使わないと…』

「禰豆子、大丈夫か？！…A、なんで！」


禰豆子は妹なのに！

「妹」の単語に体が止まる。

その隙に炭治郎が突進して私を飛ばし、禰豆子を助けた。


『…私の知ってる禰豆子はそんな小さくない。』


そう言いながら呼吸を始める。

全神経を尖らせた。

何とかして、斬らないと。


『…天の呼吸 参ノ型 天命ノ夜』


せめて慈悲の型で。

そう思い振るった刃にぶつかる音。


「Aちゃん。やめてよ。」

『禰豆子は鬼だよ。』


いいから早くお前も手伝えよ。


「ヴァァァァ！！！さっきから聞いてりゃあ！！禰豆子は権八郎の妹だっつってんだろ！」


伊之助がこちらに走ってきた。

難なく交わす。

だから彼女はニガテなんだ。

私もそんな風に愛されたかった。

あの家から竃門家に養子に入った時点で、私は「可哀想な子」だったから。

何もしなくても可愛い彼女とは違って、何かをしなきゃ可愛がられないから。


冷たい目を持つ父親にもよく殴られた。


『…あの日、炭治郎がおかしかった。』


その言葉だけを呟いて、私はがむしゃらに走った。

もう、炭治郎達とはもとに戻れない。

私が勝手に怯えて突っぱねて。

その上可愛い妹に手を出した。



『…さようなら。』

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