193 ページ43
『あの、藤さんたちのところへ合流するのでは...？』
藤さんたちのところへ合流する気満々だったのに
辿り着いたのは私の部屋だった。
「いや、合流は後でもいいから
まずはAと話そうと思って。」
『話、ですか？』
「俺の部屋だと源さんがいつ戻ってくるか分からないから
Aの部屋で悪いけど。」
慣れた手つきでドアの鍵をかけ、
山田さんは中へ入っていく。
山田さんの後に続き私は中へ入り、
机を挟み対面に座る。
しばらく沈黙が私たちを包み込み
先ほど感じた居心地の悪さが再び顔を出す。
「ごめん、一瞬席外す。」
そう言って山田さんは私の部屋を出ていき、
数分後また戻ってきたかと思うと
先ほどと同様、部屋の鍵をかけ私の前に座った。
戻ってきた山田さんは何か思い詰めたような
固い表情をしていて、なんだかより一層気まずい。
2度目の沈黙の後、山田さんはゆっくりと口を開いた。
「俺さ、」
『はい。』
「Aのこと好きだって、言ったじゃん？」
『…はい。』
「あれ、撤回する。」
『撤回…？』
「うん、撤回。好きって言ったのは忘れて欲しい。」
『そんな…。』
�睫擇帽霰鬚気譴浸�、
真っ先に頭に浮かんだのは山田さんの顔だった。
抱きしめられた時、
真っ先に頭に浮かんだのは夕陽が綺麗な署の渡り廊下で
泣いている私を抱き締めてくれたあの温もりだった。
私の遅すぎる青春の相手は、
きっと山田さんになるだろうと
ようやく自分の気持ちに向き合い始めたのに。
神様なんて元から信じていなかったけど、
こういう時くらい味方をしてくれてもいいじゃない。
慣れない感情を処理するには、
自分の中の持ち合わせている感情と
照らし合わせるには、
あまりにも手に負えない感情ばかりで、
目の前に座っている彼の気持ちを想像する余裕は
私にはなかった。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 738人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
なこ(プロフ) - 久しぶりの更新ありがとうございます！山田さんとのやりとりの続き楽しみにしてたので、読めて嬉しかったです！引き続き応援してます！！ (2022年10月5日 16時) (
レス) @page33 id: 247691cc0f (このIDを非表示/違反報告)
みい(プロフ) - お話とっても素敵で、一気読みしてしまいました…！次の更新も楽しみにしています！ (2022年10月1日 11時) (レス) @page32 id: 354ae59861 (このIDを非表示/違反報告)
りんりん - 続き待ってます！ (2022年9月16日 19時) (レス) @page32 id: b69c396b13 (このIDを非表示/違反報告)
みゆ - 更新楽しみにしてます！ (2022年9月5日 17時) (レス) @page32 id: f05da85961 (このIDを非表示/違反報告)
りあ(プロフ) - この絶妙な更新間隔といい、次が気になる終わりといい見事に感情が振り回されてます。2人の関係がどうなるか楽しみです。 (2022年7月24日 1時) (レス) @page31 id: 6b4a195c64 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：みい | 作成日時：2022年6月8日 0時
