7.道具扱いと他人は言う ページ35
手入れをすれば、傷は消える
そう言ったAに、途轍もない苛立ちを感じた。
確かに、そうかも知れない。
だけれど、『痛い』という感覚は、感情は、残るじゃないか。
これ以上Aを目の前にすると、自分が何を言ってしまうか分からなかったから、Aがおずおずと取り出した短刀をひったくって会議室を出た。
いや、正しくは出ようとした。
一部始終を黙して見ていたグルッペンに呼び止められる。
「あそこで糾弾しなかったのは、よく我慢したな」
「今の俺はあかん。Aに酷いこと言うてまう」
「それでいい。少し距離を置け。考える時間は必要だ」
「すまん、後は頼んだ」
不甲斐ない主人だと、思う。
俺の気も知らないでと、怒鳴ってしまいそうだから。
そうじゃないのに、ただ一言、心配したと言えばいいのに。
どうにもならない感情を持て余して、がしがしと頭を掻き毟った。
自室に着いて、手入れの準備をする。
ぺ神に任せては来たが、早く手入れをしてやらないと傷は良くならないんだろう。
ひとらんから譲り受けた手入れ道具を出してきて、一つ深呼吸をした。
俺があそこで感情のままに怒鳴っていたら、Aはどうしただろうか。
泣くのか。
それとも、暴君であると見限るか。
いや、Aに限ってそれはないだろう。そう思いたいだけの願望だが。
ぐるぐると渦巻く感情の割に手入れを進める手はスムーズで、何の滞りもなく終わった。
真っ白な布に包んで、Aがいつも寝ているベッドに置く。
グルッペンの言う通り、お互いに考える時間が必要だった。
AはAの確固たる思いを持ってあの行動を取ったのだし、それは理解できる。
もし俺が同じ立場で、グルッペンが窮地に立たされていたら同じ事をしたかも知れない。
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ハコ(プロフ) - 弥生夏さん» コメントありがとうございます。こういったタイプの主人公くんを動かすのは初めてなので、とても嬉しいです。ゆっくり更新になりますが、気長にお待ちいただけると幸いです。 (2020年6月28日 0時) (
レス) id: ad61983e44 (このIDを非表示/違反報告)
弥生夏(プロフ) - かっわいい！高評価あと50回くらい押したい！更新頑張ってください！応援してます！ (2020年6月26日 7時) (レス) id: 2f1398aac7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ハコ | 作成日時：2020年6月20日 0時
