〜第三十一話〜 ページ34
「今度こそ、行ってきます!」
「行ってきます。」
雄大と二人でそう言って、私たちは穿界門の中へ入っていった。
地獄蝶を頼りに走っていく。
「ねぇ、紅葉。」
「ん?なに?」
雄大が急に話しかけてきた。
「一人で抱え込まないでね。」
「うん?…分かった。」
正直、あんまり意味が分からなかった。
私は何も抱え込んではいないのに
雄大はどうしてそんなこと言ったんだろう。
私には分からなかった。
ずっと走っていると、だんだん光が見えてきた。
「そろそろ現世かな?」
「僕、ずっと前の休みに行ったきりだから、ちょっと楽しみ。」
お互い少しわくわくしていたのも束の間
出口だ。そう思って飛び込んだ光の先は、空の上だった。
「うそでしょ待ってよ!」
高所恐怖症の雄大は、半分意識を失っている。
「雄大!しっかりして!」
そう言いながらどんどん下へ落ちていく
「あー待ってこれしんじゃう!?」
「紅葉!そんなこと言わないで!!」
もうだめだ。そう思って目をつぶった。
でも、いつまでたっても痛みはなかったし、落ちていく感覚もなくなった。
恐る恐る目を開けると、瞬神と呼ばれ、砕蜂隊長が愛してやまない、四楓院夜一様が私を抱えていた。
「無事か?」
夜一様が私をチラッとみて聞いた。
「は、はい。大丈夫です。」
こんなところ見られたら、砕蜂隊長に抹殺されていた。
雄大は浦原喜助様に抱えられていた。
「あ、あの、ありがとうございます。自分で歩けます!」
「今は時間が惜しい。急いで浦原商店に向かうぞ。」
「は、はい…。」
私は夜一様に身をゆだね、横目で現世の街並みを見た。
少し前に来た頃と変わりはなかった。
まぁ、そんな急激に変わっても困るけど…
「ほれ。ついたぞ。」
そう言って浦原商店の前におろしてもらった
「すみません。ありがとうございます。」
「なに。気にするな。」
夜一様はそう言ってすぐ店に入っていってしまった。
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作者名:稀代 | 作成日時:2019年10月5日 16時