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Gray.273 ページ23

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灰崎くんの事を誰より分かってあげられる自身はあった。
でも、…それは私じゃなくてもいいんじゃないか。

私より先に私以外にもわかってくれた子はいたんじゃないか。


たまにそう、思ってしまう。



「A」


「え、…なに?」



余計に何も言えなくなった私を灰崎くんが見下ろす。
そして、ポケットに入れていた右手を私に差し出すと

懐かしい言葉を、口にした。



「そのパン"頂戴"」


「!」



ああ、信じたくなかったのに。
その顔も言葉の言い方も私は知ってる。

ずっと拒絶してきたのに今はその事実が嬉しいなんて。



「……いいよ。良いよ!……しょうちゃん」


「…サンキュ」



私から受け取ったパンを一口齧るとくちゃくちゃと音を立てながら咀嚼し喋る。



「そのどうでもいいリロン?で言うとよォ」



そして私の肩に手を回すとニヤリと厭らしい笑みを浮かべた。



「俺、コイツとは小学生の時からの付き合いなんだよ。
お前とは中学。つまり出会った時期すら
Aに叶わねぇ訳だ。残念だったなァ?」


「!」



そしてとうとう、女王様が俯いた。
その姿に隣席の彼も責めるのを止めて席に戻る。

やっと静かになった教室でけれどまだクラスメイトからの野次は飛んできた。



「っつーかさ、俺らが聞きたいのって黒板の事なんだけど?
(人1)さんって浮気するタイプだと思わなかったなー」


「ってか寧ろ灰崎が奪ったのが正解じゃね?
アイツよく人の彼女奪ってくじゃん」


「ちょっと悪く言うのやめなよー」




「付き合ってるよ」



「!」



それは、私でも灰崎くんでもなかった。
また、彼に助けられてしまった。
いつもいつも助けてくれる隣の席の男の子。

灰崎くんを恨んでもおかしくないのに
どれだけ優しい子なんだろう。



「俺さぁ、前カラオケ行った時に(人1)に告ったんだよねー。
でも振られた。…灰崎と付き合ってるからごめんってさ」



その言葉を言うのにどれ程に傷付いた事が。
どうしてそこまでして誰かの為に傷付けるのか。

でもごめん…もう少しだけ、傷付けるね。



「灰崎くん」


「……あ?」



彼が私より良い子と出会えますように。
私にとっての、灰崎くんのように。

私は灰崎くんの服を掴むと背伸びをした。



「…大好きだよ、しょうちゃん」


「っ」



そして間もなく距離が無くなる。

クラスメイトのザワ付きと視線を感じながら
隣席の彼の言葉がトドメだった。



「言ったろ?付き合ってんだよコイツら」

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マリイ - ミリイのリクに虹村とこのままが良いって言う奴いるからミリイが怒ってる そのコメに返信するから余計に怒った ミリイに全て聞かないとダメ (2019年8月24日 14時) (携帯から) (レス) id: 82a6cba0ff (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:由麻 | 作成日時:2019年8月8日 0時

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