Gray.154 ページ4
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ー灰崎side
第四Qでの大輝の目は今までと違っていた。
───それは、これ以上点を取られないように素直にディフェンスに屈する…なんて体勢では無かった。
「灰崎。認めてやるよ。今回はマグレじゃねェ」
落ち着いた声、脱力した野生に近い体勢
これは、試合を録画したビデオでしか見た事がない。
「けどな、……ここまでだ」
その碧眼が光るのが見えて、大輝の姿は俺の前から居なくなった。
相手をするのが初めてだったとはいえまるで瞬間移動でもしたかのようだった。
『おっと青峰大輝!第四Q開始直後の得点だー!!』
審判の声に、一気にこの場にいた全員が盛り上がった。
振り向くと大輝の視線はもうボールにしか無かった。
青く光る瞳は、黒豹も負ける程の威圧で。
「…怖」
ゾーン。これが、そうなのか。
───ゾーンなんて、俺は入れない。
「…っ」
どうする。どうする。どうする。考えろ。
──そう思っても体は動かない。
そこから先、俺はゾーンに圧倒されるばかりだった。
走っても追いつけないし、ゴールも止められない。
ただ時間は過ぎていき、点差は縮み、並び、そして超えるのを眺めるしかできなかった。
「クソ…ッ」
もう少しで勝てると思っていたのに。
俺はダイキに負けるのか?
もしも、勝てる方法があるとすれば。
「…ゾーン」
考えた事は無かった。けれど俺もあるいは、
もし、ゾーンに入れれば。
入り方なんてものは知らないけれど
もう勝てる方法はそれしか、無いんじゃないか。
俺ですら止められないダイキを止めれる奴なんて福田総合にはいない。
やっぱり、それしかない。
だから俺は、
ダイキの方を見た。
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作者名:由麻 | 作成日時:2019年3月26日 23時