Gray.151 ページ1
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ー貴女side
御手洗から戻った時にはハーフタイムは終わっていて、もう第三Qが始まっていた。
てっきりまた青峰くんのマークに着くと思っていたけれど
灰崎くんは四番、若松孝輔のマークに着いていた。
彼の視線はジッ、と青峰くんに向けられている。
にも関わらずに相手はマークを外れる事が出来ないでいた。
「…」
そのあまりの灰崎くんの集中力にベンチに座りながら
自分の心臓がバクバクと激しく脈打っているのを感じた。
前回は…マグレと言えばマグレだったのかもしれない。
あの時の灰崎くんはただ死に物狂いに食らいついているように見えた。
けど今は違う。
ああ、多分、きっと
次に青峰くんがシュートを決めたら、彼は青峰くんの全てを奪う。
そしてそれは直ぐにやってきた。
もっちー先輩のマークは青峰くんには簡単に抜けれるものだったから。
残酷にもそれすら灰崎くんは狙っていて、先輩はそれを受け入れたのだろうけれど。
『三十六!第三Q初得点は桐皇学園!』───そんな審判の声が、合図だった。
灰崎くんともっちー先輩がポジションを交代する。
青峰くんのマークに着いた灰崎くんは
とても満足そうに、
不気味に、
そして、酷く蠱惑的に、
自らの親指を、舐めた。
「…やっと、調子良い時の癖が出て来た」
未だバクバクとうるさい心臓を押さえながら灰崎くんの姿を見つめる。
それからの彼に、もう周りなんて見えない程に
怖いくらいに惹かれてしまった。
ああ、やっぱり。
私は、バスケをしている灰崎くんが好きだ。
彼のバスケが、好きなんだ。
だからずっと、彼が楽しそうにバスケをしているのを見ていたい。
久しぶりにハッキリと、そう思った。
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作者名：由麻 | 作成日時：2019年3月26日 23時
