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Gray.111 ページ11

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ー貴女side



練習試合の日程が決まってから前日まで
意外と言ったら失礼かもしれないけれど、灰崎くんは一度も練習をサボらなかった。

日によっては居残りまでして
まるで中学時代に怠惰、では無く逃避していた分を取り返すように
まるで何かに縋り付くように何かを試すように、

特に前日である今日は遅くまで練習は続いていた。



夜中の八時過ぎはとっくに練習は終わり、体育館どころか学校の門も閉まっている。

灰崎くんは自分の私物らしい黒色のバスケットボールを寮から持ってくると
同じく寮の食堂で夕食を食べていた私に電話を寄越してきた。

正直、野外のストバスコートで練習している灰崎くんの姿を見ている今を信じきれていない。


別に公式試合でも無い、ただの練習試合なのに。
ここまで本気になるなんて。



「…灰崎くん」



オーバーワークだと、言わないといけないと思うのに
どうしても彼から視線を外せなかった。
彼が「今から練習に付き合え」なんて言うのは初めてだったから。
気持ちの理解は追いつかなくても、どれだけ明日の試合に掛けているかは分かってるつもりだから。



「……え?」



まだ肌寒い、五月の夜風を切ってドリブルをする彼が

一瞬だけ、青峰くんに似てると思ったのは。


暗がりのせいなのか、それとも明日の試合を心待ちにして楽しそうに笑っているその横顔が似ていたのか。


あるいは。



「あー!もう無理!しんどい腹減った!」



休憩も無しに二時間ぶっ続けで練習に集中していた灰崎くんは、急に痺れを切らしたようにそう夜空に叫ぶと私の座るベンチまでやってきて、どっかと隣に腰掛けてきた。

それだけで彼のいつも付けている香水の匂いが掻き消される程の熱や汗の匂いが感じられて、濡れたシャツを見ていると感嘆して思わず練習もしていないのに、私の体まで熱を帯びてくる。



「お疲れ様」



来る前に自販機で買った少しだけ温くなったスポドリを渡すと
彼は何も言わずに受け取り、まるで砂漠でオアシスに出会ったラクダのように
ゴクゴクと喉を鳴らしながら五百mlを一気に飲み干してしまった。

そして、一度口元を拭うと地面を見つめながら小さく問い掛けてきた。



「…どうだよ、練習見てて」



改善点について聞いているのか、褒めて欲しいだけなのか
特に何も考えずに聞いているのか

私には分からなかったけれど
その全てに対して、…総じて答えた。



「凄く、明日が楽しみ」



それは心からの期待で、本音だった。

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ゴキブリと化した灰崎 - ミリイ(灰崎信者)さん» てめぇも灰崎も◯ね、カッコよくねぇわあんな奴。キセキバカにすんなよ。クソバカ (2020年4月1日 21時) (レス) id: 5f9510aad2 (このIDを非表示/違反報告)
ゴキブリと化した灰崎 - こんな奴が叩かれないのが私は本当にムカつく (2020年4月1日 21時) (レス) id: 5f9510aad2 (このIDを非表示/違反報告)
ゴキブリと化した灰崎 - ミリイ(灰崎信者)さん» 何がリク主の特権だよ!!作者はテメェの道具じゃねぇんだよ!!テメェにリクする資格とかねぇわそんなに見たけりゃ自分で書けば?マリイミリイキモい◯ねウザい自分の意見を押し通すな。迷惑考えろ!二度とリクすんな!占ツクやめろ、ネットやめろ (2020年4月1日 21時) (レス) id: 5f9510aad2 (このIDを非表示/違反報告)
ゴキブリと化した灰崎 - ミリイ(灰崎信者)さん» キャラに様つける奴キモいし、ウザい。氏ね (2020年4月1日 21時) (レス) id: 5f9510aad2 (このIDを非表示/違反報告)
ゴキブリと化した灰崎 - ミリイ(灰崎信者)さん» 吐き気するなら見るなよwwwバカ発言多くて草 (2020年4月1日 21時) (レス) id: 5f9510aad2 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:由麻 | 作成日時:2018年12月26日 1時

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