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Gray.57 ページ7

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ー貴女side



「右腕にヒビ。腰に打撲、左腕と左脚にかすり傷。以上です」



あれから、私は灰崎くんに皆の元に戻るように言うとすぐに病院に行った。

軽い検査と手当で二日入院してから、退院後にWC中に宿泊していたホテルの広間で部員の皆に事情と共に現状報告をしたのが冒頭に当たる。



「…灰崎」


「へ?」



石田先輩は灰崎くんに向き合うとパチンッと音を立てながらデコピンをした。



「いってぇ!」


「マネージャーに怪我させてどうする!」


「え、怪我させたの俺じゃなくね」



今まで見たことの無い石田先輩の剣幕に流石の灰崎くんも思わず怯んでいた。
いや、確かに怪我は青峰くんの気遣い左ストレートのせいだ。



「そもそもの原因が灰崎くんなんだよなぁ…」



私が呟くと石田先輩も頷きながら言葉を続けた。



「お前が黄瀬に喧嘩ふっかけようとしなければこんな事にはならなかっただろう」


「……」


「試合に負けて悔しかったなら来年に勝て」


「…は?」



灰崎くんはポカンとしていた。
一瞬、間を開けてからハッとしたように灰崎くんが言葉を続ける。



「別に、悔しいとかじゃ、」


「バッシュ、捨てなかったのにか」


「え…?」



石田先輩の言葉に、灰崎くんより先に反応してしまったのは私だった。



「何で知ってッ、いや、……」



何か言うのは得策では無いと察したらしい。
灰崎くんが押し黙ると口を開いたのはもっちー先輩だった。



「昨日、俺が偶然見たんだよ。」


「……」



灰崎くんは黙ったままだ。
……そっか、バッシュ、今度は捨てなかったんだ。



「とにかくだ、来年は望月がキャプテンになる。
…散ッッ々偉そうにして負けたんだ、来年もまた負けたなんて報告を望月から聞いたらその時には俺はお前を椅子に拘束してタコ殴りにする。

分かったらさっさとホテルを出るぞ。

灰崎はAの介抱をしてやれ」


「……ウス」



珍しく普通に返事を返すと部員はゾロゾロと部屋を出て行き、私と灰崎くんだけが残された。

耐えきれなくなって私が笑い出す。



「あははっ!恨みが酷いっ」


「…ある意味、虹村どころか赤司よりヤベェかもしんね」


「…そう言えば、バッシュ捨てなかったんだね」


「……別に。気まぐれだ。…気まぐれにもう少しバスケも続けてやる」



そう言って灰崎くんは私の鞄を持ってくれた。
その後ろ姿を眺めつつ聞こえないように小さく呟く。



「良かった。…やっぱり、暇つぶしじゃ無かった」

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作者名:由麻 | 作成日時:2018年12月14日 6時

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